3部分:第三章
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第三章
「市民達のな」
「酒の飲み過ぎは身体に悪い」
「だからですか」
「そうだ、だからだ」
それでだとだ。彼も話すのだった。
「ロシア人のアルコールの消費の凄さは言うまでもないな」
「はい、それはもう」
「おそらく世界一では」
「何しろロシアですから」
彼等もそれはわかっていた。そしてだった。あらためて大統領に話した。
「それを止めてロシア人に健康的な生活を送ってもらう為にあえて」
「それを施行されたのですね」
「つまりは」
「ロシア人の平均寿命にも関わっていたしな」
そこまで至っていたのだ。かなり深刻な話だった。
「それでしたのだが」
「しかし酒がなければです」
「ああして暴動になりましたね」
「その酒がなければかえって」
「ああなったと」
「ああなるとは思わなかった」
確かな顔で言う大統領だった。
「本当にな。酒は必要なのか」
「その様ですね、どうやら」
「それは間違いありません」
「ロシアにとっては」
「健康に悪いのにか」
実はこの大統領は酒を飲まない。ロシア人では極めて少数派だがそうなのだ。それで酒についてもよく知らないのであった。
しかし今はだ。その酒について語るのだった。
「それに飲んで仕事をすれば支障が出るのにか」
「身体が温まりますし」
「ですから」
「いいのだな」
「はい、それにです」
「こんな言葉もあります」
ここでだった。彼等はこの言葉を出した。
「酒は百薬の長です」
「確か中国の言葉ですが」
「ですから」
「それにか」
その言葉に加えてだった。大統領はこうも話した。
「ロシアとは即ち酒なのだな」
「ですから。酒を飲まないということはです」
「ロシアでは考えられません」
「むしろ飲んでこそです」
「ロシアか。わかった」
大統領は少し溜息をついてだった。こう述べたのだった。
「ロシアというものがな。今になってな」
「はい、それでは」
「我々もまた」
周りの者達も笑顔になってだ。そうしてだった。
彼等もまた酒を飲みながら仕事にかかるのだった。それがまさにロシアだった。酒がこの国を支え動かしている原動力なのであった。
酒がない! 完
2010・12・1
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