第4話 僕と彼女の小さな思い出
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思う合図が響く瞬間。
そしてパン!っと音が鳴るのと同時にみんな一斉に走り出すときの空気...
りんは大好きだった。走る理由は人それぞれでもコースに入った時から感じる「勝ちたい」という気持ちも「楽しみたい」という気持ちも十人十色に目つきが違うあの時も。
りんはどちらかというと「楽しみたい」という気持ちの方が強い。
一位を取るのも自己ベストを更新するのも興味は無い。
純粋に走りたいだけ。
『星空、期待してるぞ!絶対全国行けるからな!』
『見て!あの子が今すごいって噂の星空凛ちゃんよ!』
『君が星空君だね。我々委員会の方も期待してるからな』
みんなどうしてりんに期待するの?
会場ですれ違う他校の知り合いも観客さんも偉い人も...
別に他の人でいいじゃん!なんでりんなの!?
期待されることに慣れていなかったりんは関東大会で楽しく走るなんでできなかった。変に足が重く感じられいつもは絶対考えないことや焦りだとか...みんなと一緒に走ってるはずなのに置いていかれ、次々と抜かれ、気が付けばりんは”独り”で走っていた。
自分でもこんな気分を味わうのは初めてだった。
───楽しく、なかった。
『星空にはがっかりだ。』
『星空凛ちゃんって子、期待されてたけど大したことなかったね。』
『次はがんばれよ?』
みんながみんな勝手に期待して、ハードルあげて...その期待に応えられなかったら今度は手のひらを反すようなみんなの態度。
結果はもちろん決まってた。大会が終わり、部活のミーティングの後もりんはこうしてベンチに座ったままずっと泣いてる。
...りんは本当は”泣き虫”だ。
”スカート”を履いた時、バカにされて『女の子らしくない凛』って言われた時も、こうして一人泣いていた。
こうでもしなきゃ...”りん”は”凛”でいられなかったから...
時刻は午後の四時を過ぎたばかり。
観客も選手も帰り、静まり返った陸上競技場の選手控室でりんは一人蹲っていた。
水道の蛇口からぴちょん、ぴちょん、と音がする中りんは嗚咽を発することなく静かに...泣いていた。
「......春くん...かよちん...」
りんは、今日りんの走ってる姿を見にやって来ている大切な、大切な幼馴染の名前を呼ぶ。春くんとかよちんは幼稚園の頃からずっと一緒で、りんよりも長い時間を過ごしてきた。だけどそんなこと関係なく一緒にいることができるのは二人の幼馴染が春くんとかよちんだからだ。
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