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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十三話 ベーネミュンデ事件(その3)
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は何を?」
中将は静かに問いかけてくる。
「……伯爵夫人を身篭らせろと私に命じました」
「陛下以外の人とですね」
この人は鋭い。さすがに切れ者と言われるだけのことはある。
「そうです。そうすれば、ミューゼル大将も、伯爵夫人も死を賜ると」
中将は一つ溜息を吐く。呆れているのだろうか?
「それで可能なのですか?」
「無理です。宮中にいる限りそんな事出来るわけが無い。侯爵夫人にもそう言いました。……そう言ったら……」
「そう言ったら?」
「伯爵夫人を宮中から追い出せと、それからなら出来るだろうと」
「そう言いましたか」
「はい」
答えた後、自然と溜息が出た。
中将は目を伏せ気味にしながら考えている。何を考えているんだろうと思っていると、すっと眼を上げ問いかけてきた。
「先生のほかに、人の出入りはありますか」
「それは、出入りの商人はいますが……」
「貴族、軍人はどうです?」
「以前はフレーゲル男爵が来ていましたが」
「最近は?」
「最近ですか……コルプト子爵が時々来ているようです」
中将の目が一瞬細まったがすぐに戻った。そして強い視線で私を見る。
「間違いありませんか?」
「はい、間違いありません。一度同席しました」
「何を言っていました」
視線は強いままだ。コルプト子爵に関心が有るのか
「ミューゼル大将を誹謗していました。それと、なんと言ったか、その」
「ミッターマイヤー少将ですか?」
「そうです。ミッターマイヤー少将です、いつか復讐すると言っていました」
中将は何度かうなずきながら“コルプト子爵か”とつぶやいた。
「先生にお願いがあります」
「何でしょう。私にできる事なら」
「このまま、ベーネミュンデ侯爵夫人のところに通って欲しいのです」
「それは」
それでは、私はなんのために話したのか。
「安心してください。先生の事は国務尚書にも話しておきます。先生が処罰される事はありません」
「……」
「先生が知った内容を国務尚書に伝えて欲しいのです」
「……」
つまり、私にスパイになれということか
「長い時間ではありません。一月程度の事でしょう。お願いします」
「判りました」
仕方ない事だ。後一月我慢しよう。
■ 帝国暦486年7月17日 クラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵邸 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
「愚かな話じゃな」
俺とグレーザー医師の会話を聞いたリヒテンラーデ侯は苦りきった表情で口を開いた。俺も同感だ、原作知識で判っているとはいえベーネミュンデ侯爵夫人の愚かさには辟易する。
「それで、どうする」
「噂を流しましょう」
「噂? どんな噂じゃ」
そんな風に胡散臭そうに言わなくてもいいだろう。性格悪いぞ
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