第61話
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国家でも非常に限られた人物達しか知らない情報をエステルが知っている事にレーヴェは目を丸くして尋ねたが
「―――ある人から教えてもらったのよ。あたしが持っているこのハーモニカも元々はカリンさんので、”ある事件”で命を落としたカリンさんが自分が死ぬ直前にこのハーモニカを自分の代わりとしてヨシュアに渡して、ヨシュアが亡くなったお姉さんの形見代わりに持っているって。後、あんたが”結社”に入る前は遊撃士を目指していたこととかもね。」
「……………何故そこまで知っている。過去の俺の事やハーモニカの件はカリンを除けば俺とヨシュアしか知らないはずだ。その口ぶりからするとヨシュアがお前に話した訳ではないようだが……」
エステルの口から出た自分とヨシュア、そして今は亡きヨシュアの姉しか知らないはずの話を第三者が知っている事に気づき、目を細めてエステルを見つめた。
「………カリンさんが亡くなった”本当の理由”……”ハーメル”が関わる”ある事件”。それを話してくれたら、答えてあげるわ。」
「……それを知ったらお前は真っ白のままで居られなくなる。ヨシュアや俺たちの居る闇の領域を覗き込むことになる。その覚悟はあるか?」
エステルに尋ねられたレーヴェは静かに尋ね返した。
「………………………………。……うん、教えて。覚悟があるかどうかはちょっと分からないけど……。あたしは……ヨシュアの辿ってきた軌跡をどうしても知っておきたい。その気持ちは本当だから。」
「……いいだろう」
そしてレーヴェはかつての自分達の過去を話し始めた。
「あれは10年前……俺たちのいたハーメル村がまだ地図にあった頃のことだ。ハーメルは小さな村でな……。子どもが少なかったこともあって俺たちはいつも一緒に過ごしていた。俺はいずれ遊撃士になることを夢見てヒマを見つけては剣の練習をし……それをカリンと小さなヨシュアが眺めているのが日課になっていた。」
――それはどこにでもある小さな村の平和な光景―――
「……練習が終わった後、俺とヨシュアは、カリンの奏でるハーモニカの旋律に耳を傾けた。カリンは何でも吹けたが、俺たちの一番のお気に入りは一昔前に流行った『星の在り処』だった。そんな日がいつまでも続く……そう俺たちは信じて疑わなかった。」
―――青年達は小さな平和がずっと続いて行くと、信じ続けた………しかし―――
「村が襲われたのは、そんなある日のことだった。王国製の導力銃を携えた黒装束の一団……。彼らは村を包囲した上で住民たちをなぶり殺しにしていった。ただ一人の例外もなく、年寄りから赤子に至るまで。一息で殺された者はまだ幸せだったかもしれない。……女たちの運命はさらに悲惨だった
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