精神の奥底
57 少年の美学
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最良でも最悪でも無いものを選んでいけば、流行にも左右されないし長い間着ることができるっていうわけさ。ワイシャツやTシャツにジーンズってもう100年?いやそれ以上か、使われ続けてきたものだし、最良でも最悪でもない。そういう確固たる地位を築いてきたものは流行や時代に流されないから」
「そういうこと」
「へぇ……なるほど」
「まぁ、偉そうに言ったけど、最初にハートレスが僕に用意してくれたのがこれだったんだ」
「ハートレスが?」
「彼女の服も同じところから買ったやつだと思うし。あれだけの資産を持ちながら、こんな庶民派のところから買う理由はなんだろうって考えて行き着いたのが、この結論。彼女の受け売りってわけじゃないけど、間接的に彼女から学んだことだ」
「……そういえばサイトくん、別のフロアに行ったはずじゃ?」
「もう僕の買い物は終わった」
「え!?はやっ!」
彩斗の手には紙袋が握られていた。
確かに色違いで数着買う癖は直っていないが、今まで買ったことの無いものが入っている。
しかし彩斗の持論には則っており、流行には左右されにくいものばかりだ。
「一応、今まで買ったことがなかったライトダウン?っていうの?今は暑いから着ることもないと思うけど、季節的にはそろそろ冬だからね。他にもちょっとチャレンジしてみたよ」
「ふふっ、兄さん。いいですね」
「君たちは?」
「う〜ん、私は特に無いですけど、アイリスさんは?」
「暑い中、着ていてもおかしくないもの……これとか…かな?」
アイリスは胸のところにリボンがついた薄い水色とワインレッドの薄手のブラウス2着、黒と緑のスカート2つを恐る恐る指差す。
どちらも夏に着ていても不自然ではないし、何よりアイリスが着ていて不自然でない。
どちらも今のアイリスが着ている人形のようなゴシックロリィタ風のテイストが入っている。
ちょうど今着ている服を夏用にした感じだ。
そのアイリスのチョイスに対しては、メリーも今まで自分が手を出したことのないジャンルの服故に興味を持っているようだった。
彩斗はとりあえず試着させてみようと、慣れず一瞬、躊躇いがちになりながらも、近くの女性店員に声を掛ける。
すると反対側を向いていた状態から営業スマイルで振り返って寄ってきた。
「ハイ!」
「あの…試着って」
「あっ、試着ですね!ではあちらの方の右手に男性用の試着室、左手に女性用の試着室が…」
あまりにも元気よく笑顔で接客してくる店員に押され、接客業は自分には向いていないと痛感しつつ、続ける。
「いや、ネットナビ用の試着室を」
「あっ、ドレスアップチップの試着ですね!では、ネットナビさんの方を拝見させていただけますか?」
店員はマニュアル通りに端末の中のネットナビを確認しようと手を出した
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