精神の奥底
57 少年の美学
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やはりこの炎天下でアイリスの格好は目立ちすぎる。
その上、アイリスがきっかけでメリーや彩斗の方にも注意が向き始めていた。
彩斗は2人の手を取って歩き始める。
「人混みに巻き込まれて、予定外の場所で地上に出てしまったけど、先にアイリスちゃんの服から揃えよう。近くに多分、店があったはずだ。無くなってなければ……」
彩斗は大型の量販店の間を通って、隣の大通りに移ると自販機でスポーツドリンクを3本購入した。
「ハイ、さすがにその格好で飲み物も持ってないと不自然だ」
「あっ、ありがとう……」
「メリーも」
「ありがとうございます」
「うっ…」
「……」
「ねぇ?スポーツマンって大変な仕事だね」
「兄さんもそう思います?」
「……?」
彩斗とメリーはキャップをひねって早くも飲み始めた。
酸っぱいような、甘いような、しょっぱいような、苦いような独特の味が口の中に広がる。
汗とともに流れ出る塩分を補給する為にあえてスポーツドリンクを選んだが、スポーツというものに無縁な彩斗とメリーにはあまり馴染みの無い味だった。
正直に言ってしまえば、あまり美味しいものではないと感じており、彩斗は一気に飲み終えると、早くも2本目にミネラルウォーターを購入して口の中を洗い流した。
その一連の彩斗とメリーの会話を見て、味覚がないアイリスは頭にクエスチョンを浮かべた。
彩斗は2人を連れて、やや早歩きで衣料品店に入った。
同時に天の恵みにでも勘違いしような、冷風が3人を包んだ。
「ふぅ、生き返る……」
「ですね」
「全く、太陽の光が突き刺さるよ。暑いだけじゃなくて痛いもの」
「私もです……兄さんなんかは肌のメラニンが薄いですから。それは痛いですよ」
「2人とも十分、色白だと思うけど」
3人はひとまずエスカレーターで女性向けの売り場へ向かう。
「こんなにいっぱいあるのね」
広いスペースに棚やテーブルが並べられ、ファッションショーを思わせるようなマネキンがおすすめのコーデを纏っている。
本来なら10月ともなれば、冬に備えた長袖の服が並び、夏物は在庫処分でワゴンセールなり割引のタグがつけられているはずだが、この異常気象のせいで未だに店の主力商品となっているようだ。
ワンピースやキャミソール、ノースリーブのブラウスなど多くの夏物におすすめのタグをつけられている。
「うん、色も選択肢があるし、組み合わせで色んなバリエーションが試せるよ」
「最近だと、実際の服と同じ服のデータのチップが用意されていて、実物を見ながら検討できるみたいです」
「とりあえず、好きなものを試してみるといい。メリーも好きなものを選んできて」
「サイトくんは買わないの?」
「僕はいいよ。服には興味無いし」
「サイトくんなら似合い
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