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外見は嘘
4部分:第四章
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第四章

「だから熊ですか」
「そうですよ。実は笹だけじゃなくてですね」
「肉も食べますし」
 このことも話された。
「羊の肉も食べるんですよ」
「かなり餓えた時ですが」
「草食じゃなかったんですね」
 智仁はこのことも知ったのだった。
「何とまあ」
「これでおわかりですね」
「パンダは恐いですよ」
「はい」
 また頷く彼だった。
「いや、本当に危ういところでした」
「けれどいい映像でしたよ」
 テレビ局は視聴率を考える。それから見れば確かに今の映像はいいものだった。
「よくかわしてくれましたね」
「当たっていたら死んでましたよ」
 しかし智仁は真剣だった。
「本当に紙一重でしたから」
「けれどそれでも生きていますよね」
「身のこなしが見事でしたよ」
「相手は熊なのに」
 その一撃をかわしたこと自体がいいというのである。
「それだけのことができるなんて」
「やっぱり凄いですね」
「鍛えてますからね」
 一応こう言いはする智仁だった。
「鍛えてないとこうしたことはとてもできないですよ」
「じゃあよかったじゃないですか」
「本当に」
「けれどもうパンダ相手の仕事は引き受けませんよ」
 このことはしっかりと言うのだった。
「本当に死にますから」
「何だ、面白くないですね」
「これっきりですか」
「死に掛けたんですよ」
 だが智仁も本気である。冗談抜きであと少しで死にそうになったのだからこれも当然のことだった。流石に言わずにはいられなかった。
「冗談抜きで」
「わかりましたよ。流石に一歩間違えたら」
「放送どころじゃなかったですからね」
「そうです。ですからこれっきりです」
 智仁の目は真剣なものだった。
「こうしたことは」
「わかりましたよ」
「じゃあこういうことで」
 こうして智仁はパンダが実際はどういった動物なのかをわかったのだった。パンダが猛獣ということを知ったのである。
 またその動物園にいる智仁はだ。憮然とした顔でマネージャーと話していた。彼はベンチに座りマネージャーは立っている。そのうえでの話だった。
「懲り懲りだって?」
「あの、格闘家は確かに命懸けですけれど」
 その覚悟はある。しかしだった。
「それでもですね」
「動物相手にはなのかい」
「せめて本気でそうした企画にして下さい」
 そうしてくれというのである。
「御願いしますよ、それで」
「わかったよ。だったらそれは止めるよ」
「本当に御願いしますね」
「じゃあ次の仕事は」
 だが仕事はあるのであった。
「パンダはもう嫌ですよ」
「いやいや、それはもうわかってるから」
 マネージャーも笑いながらそれは言う。
「そう、今度はね」
「それで今度は」
「アライグマだから
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