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外見は嘘
2部分:第二章
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第二章

 そのパンダ達を相手にする仕事はだ。彼は仕事の直前にそのパンダがいる動物園において係の人からこんなことを言われたのであった。
「気をつけて下さいね」
「えっ!?」
 いきなりこんなことを言われて戸惑う彼だった。
「気をつけてとは?」
「ですからパンダに」
 気をつけろというのである。
「ジャイアントパンダですから」
「パンダの種類はわかってますけれど」
 パンダには二種類ある。ここにいる白と黒の大きなものがジャイアントパンダであり茶色で尻尾が縞模様になっている小さいものがレッサーパンダである。それぞれ種類があるのだ。
「それでもですか」
「そう、それでもです」
「気をつけて下さい」
 こう言ってくるのである。
「いいですね」
「何でですか?」
 しかし話を聞く彼はいぶかしげに返すのだった。
「パンダに餌をやって一緒に遊ぶだけですよね」
「はい、それでもです」
「いえ、だからこそです」
「だから!?」
 余計に話がわからなくなる彼だった。
「何かあるのですか?本当に」
「まああれだよ」
 それまで横に立っていたマネージャーがここで彼に話してきた。
「ここはね」
「ここは?」
「係の人の言うことをよく覚えておいてね」
 優しい声で彼に言ってきた。
「それはいいね」
「はい、じゃあ」
 そのまま頷く彼だった。
「何かよくわからないですけれど」
「まあすぐにわかるよ」
 マネージャーの言葉は今度は思わせぶりな笑みになっていた。
「それはね」
「あの、余計に」
 彼は話を聞いてであった。さらに言うのであった。
「わからなくなったんですけれど」
「もう時間だよ」
 マネージャーは自分の左手にあるその時計を見て彼に言ってきた。
「じゃあスタンバっててね」
「わかりました。それじゃあ」
 何はともあれだった。仕事に入る。そのパンダのコーナーに入る。ただしである。
 係の人達も一緒だ。テレビのスタッフ達だけではなかった。しかも彼は格闘の時の袴姿だ。上は白で下の袴は紺である。その格好で入ったのだ。
 その格好にもいぶかしみながらだ。彼は係の人に問うた。
「あの」
「何でしょうか」
「これって闘う時の格好なんですけれど」
 このことを言うのであった。
「何でなんですか?闘いの格好なのは」
「闘うからですよ」
 すると係の人は平然と答えてきたのであった。
「前川さんの試合の時の服はそれですよね」
「はい」
 それはその通りである。こくりと頷いて答えた。
「そうですけれど」
「だからです。それが前川さんにとっては一番動きやすいからです」
「話が読めないんですけれど」
 いぶかしみながら言葉を返す智仁だった。
「何か」
「ですからパンダですから」

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