第3章 リーザス陥落
第87話 最終局面へ
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イツがこの戦場で、《一騎打ち》を宣言した以上。……そして、あの男がそれを受けた以上、今この戦場でオレが戦う事はない」
「……同じく」
清十郎は、完全に刀を腰に収めると、己の血、血刀も体内へと収める。完全な無防備の形になっていた。そして、リックも同様だ。赤将の証でもあるバイ・ロードを収めて腰に賭けた。
「背を斬りたければ、それでも結構。……この戦いに、私は無粋な真似はしたくはない。私は、彼に……。――……ユーリ殿に、着いてゆくと心に決めている故」
それは、完全な無防備だった。
敵前で最も愚かな行為の一つである事は、軍人で、それも将軍であるリックも判っている事だろう。だが、それでも この2人の戦いに水を差すのだけは忍びなかった。それが、例え彼が……、ユーリが負け、生命を落としたとしても、その瞬間も、加勢をしたりはしないだろう。………彼の尊厳を傷つけるのだけはしたくはなかったから。
それは、一騎打ちを受けた側の男。
現行、人類最強の男 トーマに対しての敬意でもあった。
「……『オレに戦わせろ』と言い、ユーリに了承をさせた筈なんだがな」
清十郎は軽く笑みを見せていた。
確かに、ユーリとは約束をした。……笑って了承はしていたが、それでも今回の戦いを前には ただ見守るのみであった。両雄の一騎打ちの横槍は御法度である事、それは清十郎にもよくわかっている事であり、それが、これこそが ユーリの唯一の我侭であると言うのならば、叶えるべきだったから。……それだけの事をし続けてきた男だから。
そして、眼前の敵の行動を見て、何も言えないのは2人。
相手の行為は 生き延びられる可能性がある敵前逃亡ならまだしも、敵前戦闘放棄だ。……それが、遥かに愚行である事は、重々認識しつつも、それでも手が出せなかった、何も言えなかったのだ。
まるで、足と大地が縫い付けられたかの様に動けず、視線を変える事ができないガイヤスとサレ。
便宜上、と言えるだろう。動けなかった場面にて、先に行動をする事ができた2人を見て、ガイヤスは喋る事ができたのだ。……それも愚問、だった。
自分達も判っているのだ。
我らが誇りである将軍と正面からの《一騎打ち》
そんな事が出来る人間がこの現世で存在しているとは思いもよらなかった。
強力な個を前に、尊敬と敬意の念を向ける。
そして、軍人であれば、誰もが憧れると言える強さの象徴を目の前にし、言葉を失ってしまったのだった。
その後、サレとガイヤスの2人には目もくれずに、清十郎はリックに語りかけた。
「あの男は。……ユーリは、何かを狙っている ……だろ? リック」
「ええ、違いありません。――ただ、トーマと戦っているだ
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