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私は町の何でも屋
3部分:第三章

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第三章

「残念ですが」
「そうか、忙しいんだね」
「凄いんですよ」
 こうその客に話す。
「とても」
「それはまた難儀だね」
「かといって夜もですね」
「仕事があるのか」
「そうなんですよ。今日も仕事が入っていまして」
「おやおや、それはまた」
「けれど何か楽しいことは楽しいですよ」
 それでもこんな話もするフィガロだった。
「それはね」
「楽しいのかい」
「お金は入りますしそれに」
「それに?」
「こうしてばたばたと動き回るのもいいものです」
 こう客に話す。
「何かとね」
「そういうものかい。さて、それなら」
「それなら?」
「散髪を頼むよ」
 彼自身の話になっていた。
「今からね」
「はい、それでは」
 フィガロはこうしてその客の散髪をした。そうしてであった。
 それが終わって夕食を食べるとだ。マゼットが帰って来た。身体のあちこちに引っ掻き傷や噛み跡がある。何があったのかは言うまでもない。
 フィガロはその彼を見てだ。まずはこう言った。
「とりあえず消毒だな」
「消毒ですか」
「そう、水で洗ってそれで強いお酒で拭いておくんだ」
「そうしないと駄目ですか」
「どうも猫の傷は危ないらしいからな」
 だからだというのである。
「そうでなくても傷口は洗っておかないと危ないし」
「フィガロさんしょっちゅう言ってますね、それ」
「そうだよ。じゃあわかったね」
「はい、そうします」
 マゼットはフィガロのその言葉に頷いた。そうしてだった。
「それから傷口を包帯で巻いてですね」
「それも忘れないでね」
「傷は後が怖いんですか」
「破傷風もそれからみたいだしな」
 フィガロははっきりと確信していなかったがそれを察していた。
「だから余計にな」
「わかりました。それじゃあ」
 マゼットは一旦店の奥に入って傷口を丹念に洗った。それからその傷口を包帯で巻いて出て来るとだ。彼はあらためて話をするのだった。
「とりあえず猫はですね」
「猫は?」
「しっかりと捕まえましたから」
 マゼットはにこりと笑って話した。
「それは」
「そうか。それは何より」 
 フィガロは彼のその言葉を聞いて微笑んだ。
「それでその猫は?」
「もう飼い主に返しました」
 そうしたというのである。
「報酬も頂きましたから」
「そうか、じゃあ万事解決だね」
「何もかも。それじゃあ」
「うん、それじゃあ」
「夜の仕事ですね」
 マゼットはそこに話をやったのだった。
「手術ですよね」
「そう、カストラートのね」
 まさにそれだというのである。
「その手術があるんだよ」
「あの手術はいつもこっそりとしますね」
 マゼットは溜息交じりに述べた。

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