第二部
狩るということ
じゅうに
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『目と、耳と、心で、見て上げて。目と、耳と、心で触れて上げて。もしかしたら、貴女は沢山傷付くかもしれない。辛い想いをするかもしれない。でも、貴女がその様になってはダメよ。貴女の想いで、きっと救われる人がいるわ。だから、貴女が諦めてはダメ』
「最後まで笑いながら、そう言ってました」
母としての強さなのか、元来彼女の母親が持っていた強さなのか。どちらにせよ、強い心を持った、素敵な女性だったのだと思う。
その言葉が彼女を支え、そうありたいと行動してきた結果、私には彼女が真っ直ぐに、ブレずに成長してきたのだろうと結論付けた。
にしても、重いなおい。
私にはどうすることもできんぞ。
「なんだかすみません。急に身の上話まで始めちゃって」
そう言って照れ臭そうに笑う彼女が、妙に幼く映る。
というか、いくら友達がいないからって、こんな明らかに怪しい人外に対して無防備過ぎやしないか?
そういうジャンルでしか興奮しないなどといった、アブノーマルな癖でもお持ちなのでしょうか。
ちょっと引き気味な私が、「真っ直ぐだけども残念な変態娘」として認識を改め直したとき、視界の端に、音の波を視覚化したうねりが表示される。
もちろん、目の前にいる彼女とは別の音の波であり、その他の人族でもない。とすれば、亜人族、もしくは獣や魔物の類か。
黙って顔ごと声の方へと向けた私に、エリステインは訝しみながらも、同じようにそちらへと視線を送るが、まだまだ人間の感知できる範囲外からのモノだ。
森の奥、彼女が意識を向けても、ただ鬱蒼と繁る木々が見えるだけだ。であるから、エリステインの顔は、私の顔と森とを何度も往復していた。
私はヘルメットのスキャン機能を起動させるとの同時に、可視光線のレンジを変更して木々を透過させていく。
まるで、中身のない3Dプログラムのように、シルエットのみが視覚化された風景をズームさせ、唸り声の正体を追っていくと、それは居た。
獏のような、上唇と同化した鼻をヒクつかせ、カメレオンのように稼働する目は忙しなく周囲を見回している。鋭い犬歯は上下とも突き出しており、体は馬のような引き締まった体つきをしているが、前足が長く、後ろにいくほどに短くなっており、その体を支える6本の足を合わせて、なんともアンバランスな風貌をしているのだろうか。
体高は私と同じ位ではあるが、頭頂部まで合わせると3メートルは優に越えており、重量馬のよりも大きいが、線はサラブレットのように細い。
全く持って速く走りそうには見えないが、魔法のようなモノが存在する世界であるのだから、見た目だけでの判断は危険か。
私が全速力で走って5、6分の距離といったところか。
「
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