第二部
狩るということ
じゅういち
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のブレない感じ、私は嫌いじゃない。
「よし、あとはこれを取り付ければ元通り」
そうして手に持ったパーツを合わせようと、カチャカチャと両手指を動かす。
向きを変え、差し込む位置を変え、少し考えてから手を変え品を変え、そこまでして、私は気付く。
アカン、これ違う。
「……え、うそ。じゃあ、これドコの部分よ」
私の繊細かつ、大胆な指捌きはまだ終わらない。
―
あれから小一時間、私は再度バラしては組み立てを3度ほど行い、無事に何事もなくエンジンルームを出て、現在は背凭れのない操縦席に座っている。
浮かび上がる立体映像に目を通しては、著しく変化のない状況に深く溜息をついて、両膝に両肘をつく格好で前のめりになる。
いつもの癖で背凭れに体を預けようとして、そのまま倒れてしまったための、苦肉の策だ。
さて、どうしたものかと、私の癖で口元に生えている4本の牙をカチカチ鳴らす。
顫動音と牙のカチカチ音。図書館に居れば即座に職員がやって来て、退館願いが出されるだろうが気にしない。
さて、エリステインという人族に、私の存在が知れたいま、少なくとも船だけは移動させねばならない。
彼女と別れる際、私の存在を口外しないように言い含めてはいるが、近隣で何かがあれば私自身が関係せずとも、彼女自身が私を紐付けて考えてしまう可能性がある。もしその際に、彼女よりも立場が上の者から問い質されれば、答えないわけにはいかないだろう。
そういうリスクも考えて、高度な知的生命体との接触は避けようとしていたのに、いまとなっては後の祭りだ。
船の存在自体は知られていないのと、私への認識は亜人族(デミ・ヒューマン)といった、この地固有のものとして考えられているのは僥倖と言えるか……。
つきたくもない溜息を、無意識の内に吐いてしまう。
と、船内にアラートが響く。
まさかと思い、勢いよく身を起こした私は、映し出された立体映像に絶句する。
そこに映っているのは件の女騎士、エリステイン・フラウ・リンドルムであった。
―
「何をしているんだ、貴様は」
木に背中を預け、私の体重を支えられる枝の上から、既に光学迷彩を解いた姿で、私は呆れ気味に彼女へ問い掛ける。
「来てくれると思ってました」
低いグロウルの効いた機械音で、背後から声を掛けられれば、大多数の人間は怯えること間違いない。だが、どうやら彼女は違ったようだ。
喜色を浮かべた声色で私を見上げる瞳は、どこまでも真っ直ぐで、内側の私は更に呆れ返る。
しかし、馬鹿丁寧に彼女の前へと姿を見せる私も、大概ではある。
「何か用か?」
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