遺言。 一枚目
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であれば、外出禁止なんてことはあまり無い。
それは由生が一番良く知っているはずでした。
だが、彼は照れ臭そうに笑い、今さっき告げた理由を口にします。
「でも、ほら…。期待して、駄目って言われたら哀しいじゃん。だから、まずは“駄目”って思っておいた方がいいだろ?」
「……」
そんなことを、哀しげに…ではなく、照れ臭そうに笑いながら言い、俺は笑顔を引っ込めてしまいました。
我慢とか自虐的とかな笑みでは一切ありません。
もうそんな浅い場所に、由生はいないのです。
叶うだけでなく、望むこと自体が、実は幸せで強欲なことだと無意識に学んでしまっているのでしょう。
そう思うと俺は哀しくなりかけますが、本人が哀しくないのなら、俺が哀しくなったってそれは同情です。
随分前にそれは止めると決めたから、俺は再度笑みました。
しかし脳天気に笑い飛ばすのは無理だったので、微笑で。
「駄目だったら、通販って手もあるだろ。春物は売ってる時期短いぞー?」
「ぱ、パソコン取ってパソコン!」
「どーこに置いたっけなー?」
「ちょ…戸棚の中って知ってるだろ…!」
慌て出す由生の声をからかいながら、たらたらとわざとゆっくりノートパソコンを戸棚から取りだし、サイドテーブルへ置きます。
コンセント入れてやって電源ボタンを押した段階で放置し、暫くはソファでスマフォを弄っていましたが、滅多にパソコンなど使わないせいで…しかも服の買い物なんて相当幅広いジャンル見ようとしてるわけですし…当然、WEB内で迷子になったようでした。
このご時世でこの年齢で、日常ネットすら弄らないというのだから驚きですが、“ハイテクよりもアナログが好き”というその好み自体、由生を少年の世界に留めている要因の一つであるから、俺は返っていいと思っています。
あんまり多くの楽しみを知っても、できないんじゃ返って辛いだけだと思いますし。
だったら知らない方がいいでしょうから、彼のご両親もネットをあまり推奨しないのでしょう。
「どこがいいか分かんない…」
「どれ。じゃあ俺がよく行くブランド見る?」
「やってー」
テーブルの上を、由生がパソコンこっちに押し退けます。
ソファを立って、傍まで行き、横からノートパソコンへ手を伸ばします。
カタカタとボードを打つ俺の指先を、妙味深そうにいつも由生は覗きます。
「ヒロ、打つの早いね」
「そう? 普通だよ」
「…パソコンって目が痛くなるから苦手だ」
両手の平で左右の目を擦りながら、小さくぼやきました。
…確かに、俺もパソコン始めた頃は苦手だったかもしれないと、思い起こした。
でも、それはもう本当に随分前だ。
小学生とかレベル。
例えば年齢が一緒でも、由生と俺やその他の同級生の間には、このように十年程度の差が
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