遺言。 一枚目
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きめのものを一冊取り、表紙を開きます。
頭の一ページを飛ばすのは俺の癖のようなもので、最初の一ページの右下に今日の日付だけを付け、二ページ目の白紙を机の上に鎮座させます。
椅子に座り、雑記用の鉛筆をしばらく弄っていましたが、やがて取りかかることにしました。
人物画の練習として、俺はよく由生を描きます。
描き慣れていると言ってもいい。
だから、鉛筆は恙なく進んでいきました。
左手で頬杖をつきながら、躊躇いもなく線を足していく。
…由生が、もし普通に学校に来ていたら、彼は一体どんな生徒だっただろう。
誰と友達になっただろう。
当然、学校の授業は遅れっぱなしだけど、決して馬鹿ではないから、最初から普通に授業を受けていれば、たぶん俺たちと同じ特選クラスだったんじゃないでしょうか。
そうすれば、例え何かあっても俺が面倒を見られるし。
…ああ、いや。そうなっていない設定での想像ですから、面倒を見る必要なんて無いのか。
どうも彼が健全な姿というのは想像が付かなくて困ってしまいます。
仮に由生が通学するとなると、友達として打って付けな相手を探すため、俺は頭の中でクラスメイトの顔を並べました。
「…守田とかかなあ」
ぽつりと無意識に呟きます。
守田というのは俺のクラスのリーダー格の男です。
明るくていい奴です。
これといってすぐに短所が思いつかないくらいには。
文武両道で面倒見がよく、人からよくよく好かれます。
HR委員もあいつですから、由生のような、どちらかといえば気弱な生徒がクラスにいたら担任にも頼まれるだろうし、性格からいっても進んで面倒を見るでしょう。
何度か顔も合わせているはずですし、あいつだったらぴったりかもしれません。
「んー…。でも、ちょっと守田は元気過ぎるかもしれないな。結構口も悪いし…」
独りごちて、考えを改めます。
良くも悪くも元気でノリが良い奴だから、由生の周りにはあまりいないタイプで驚くかもしれません。
だったら、クラスメイトの犬伏とかの方が返っていいのかもしれません。
あいつの方が面倒見という点では尚良さそうだと思うし、読書好きでいつも休み時間とか必要がない限り一人で本を読んでいたりするし、そのくせ人見知りはあんまりせず…。
本好き同士で話が合うかもしれません。
…などと、そこまで考えていてはたりと我に返りました。
所詮想像だ。
何を真面目に、「if」の話で由生の友達のことを考えているのか…。
「…あいつの制服、埃被ってんじゃないかな」
自分の馬鹿さ加減に苦笑して、無意識だったスケッチブックに意識を戻しました。
いつの間にか、自動描画をしていた絵はできあがりつつありました。
いつか病室のベッドで本を読んでいた由生をスケッチしたことがありましたが、その服と背景
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