第七話 姉としての責任その十五
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「深海魚はアンコウ以外食べないでしょ」
「だからか」
「名前は聞いててもね」
「外見は知らないんだな」
「ええ、リュウグウノツカイってああした形なのね」
「頭に赤いリボンが数本ある」
実際にだった、その魚にはあった。
「全体は見えないが」
「ううん、海が荒れるのかしら」
「近いうちには」
「それは困ったわね」
実際にだった、母は眉を曇らせて言った。
「海が荒れるなんて」
「そうだな、しかし」
「しかし?」
「はじめて見た」
龍馬はその顔を強張らせていた、そのうえでの言葉だ。
「あんなものはな」
「お母さんもよ」
「噂には聞いてたがな」
「あのお魚って珍しいお魚よね」
「謎が多いらしいな」
「お母さん見たのはじめてよ」
母はこうも言った。
「というかね」
「見た人の方がな」
「ずっと少ないお魚よね」
「俺もはじめて見た」
「そうよね」
「見ていい魚じゃないらしいからな」
「海が荒れるのよね」
「それだけか」
何かだった、龍馬は。
海が荒れる様に嫌な予感がした、それでこう言ったのだ。
「何もなかったらいいな」
「ええ、本当にね」
「まさか見るとは思わなかった」
呟く様に出した言葉だ。
「優花と話した途端にだしな」
「優花君ね」
「ああ、あいつとな」
「さおういえば最近優花君お家に来てないわね」
「そういえばそうだな」
「またお家に呼んでね」
母は息子に彼の親友のことも話した。
「お母さんご馳走するから」
「パンケーキか?」
「ええ、あの娘パンケーキが好きだから」
それでというのだ。
「また焼いてあげるわ」
「シロップも用意してだな」
「そう、沢山食べてもらうから」
にこりと笑って話した、優花の話は落ち着いていていいものだった。
しかしリュウグウノツカイを見てだった、龍馬は不吉なものを感じていた。まだ海は荒れていないがそれでもだった。
第七話 完
2016・2・2
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