第00話:プロローグ
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―― 夢を、見ている。
これは現実では無く夢である。そう、黒鉄一輝は判断する。
彼が破軍学園に入学してから2週間。
晴れて抜刀者の育成機関である学園に入学したのも束の間、実家の方からの圧力で魔力制限により授業を受けさせて貰えなくなったのが一週間前。
それから彼は、毎日同じ夢を見続けているのだ。
夢の内容はいつも同じ。
黒い塊がただ、同じことを自分に向かって話し、自分がそれを聞き続ける。それだけの夢だ。
しかし、今日は違った。
いつも見えていた黒い塊が影法師のような輪郭のぼやけた人型となり、声がハッキリと聞こえるようになったのだ。
そして、また――
『例えば、己の一生がすべて定められていたとしたらどうだろう』
『人生におけるあらゆる選択、些細なものから大事なものまで、選んでいるのではなく、選ばされているとしたらどうだろう。』
『無限の可能性などというものは幻想であり、人はどれだけ足掻こうとも、定められた道の上から降りられない。』
『富める者は富めるように。貧しき者は飢えるように。善人は善人として、悪人は悪人として。美しき者醜き者、強き者弱き者、幸福な者不幸な者――――そして、勝つ者負ける者。』
『すべて初めからそうなるように・・・・・それ以外のモノにはなれぬように定められていたとしたらどうだろう。』
『ならばどのような咎人にも罪はなく、聖人にも徳などない。』
『何事も己の意思で決めたのではなく、そうさせられているのだとしたら?』
『ただ流されているだけだとしたら?』
『問うが、諸君らそれで良しとするのか?』
『持てる者らは、ただ与えられただけにすぎない虚構の玉座に満足か?』
『持たざる者らは、一片の罪咎なしに虐げられて許せるか?』
ああ...確かにそれは...嫌だな。
自分の魔力が微々たるものであるのも、そんな自分が黒鉄家に生まれたことも、そしてこれまでの境遇も。
全てが運命で決まっていたことで仕方がないなどと言われて、一輝は納得できる筈も無かった。
そして、まるで一輝の心象を見透かすように、影法師は演説を続ける。
『否、断じて否。』
『それを知った上で笑えるものなど、生きるということの意味を忘れた劣等種。人とは呼べぬ奴隷だろう。』
『気の抜けた勝利の酒ほど、興の削げるものはない。運命とやらに舐めさせられる敗北ほど、耐え難い苦汁はない。』
『このような屈辱を、このような茶番劇を、ただ繰り返し続けるのが人生なら、よろしい、私は足掻き抜こう。』
『どこまでも、どこまでも、道が終わるまで歩き続ける。遥か果てに至った場所で、私は私だけのオペラを作る。ゆえ
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