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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十一話  産みの苦しみ
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を出て行った。安心しろ、エルスハイマー。お前の安全は誰よりも同盟政府が確保するために努力するだろう。帝国は同盟との和合を望んではいるが殴られて黙っているような事はしない。お前に万一の事が有った場合、そのペナルティは同盟政府の背骨を圧し折る程の物にしてやる。その事は既に同盟政府には通達済みだ。

この時期に出立となるとハイネセンに着くのは年が明けてからになるな。向こうに着いたら確認してもらう事は沢山ある。軍の縮小に伴う艦船の廃棄、それに来年度の予算編成方針、税収の見込み等だ。特に税収の見込みは国債の発行にも関係する。エルスハイマーは忙しい日々を送る事になるだろう。

エルスハイマーには十分なスタッフを付けたが大丈夫かな。参事官、駐在武官、書記官、理事官、外務書記、翻訳官、警備対策官、調査員。いろんな名目で人を出した。軍は当然だが財務、民生、内務からも人を出している。上手くやってくれれば良いが……。二月くらいに一度確認だな。

「閣下、そろそろお時間です」
ヴァレリーが俺を見ている。時間? 何の時間だった?
「軍務省で尚書閣下、統帥本部長閣下と御約束です」
「分かりました」
そうだった、軍務省で帝国軍三長官会議だ。イゼルローン要塞とガイエスブルク要塞の事を決めないと。それにイゼルローン回廊の清掃の件も有る。……ヴァレリー、そんな咎めるような目で俺を見るな。予定を忘れる事だってあるさ。そのために君が居るんだろう。準備をするか。資料は……。アレ、何処に行った?

フェザーン遷都が正式に発表された。特に混乱は無かった。まあ発表以前に同盟には伝えていたしフェザーンでもある程度噂にはなっていたから驚きは無かったようだ。公然の秘密が秘密ではなくなった、そんなところだ。フェザーンには六月中に移動し七月一日に新帝国成立宣言を行う。

新しい暦もその時から使いたいんだが未だ同盟側と調整中だ。新暦の使用は再来年からだな。但し新暦の元年は来年という事にしよう。ちょっと変則だが仕方がない。……同盟は相変わらず立場が分かっていない。皇帝誕生日が嫌だとかルドルフ大帝生誕記念日が嫌だとか馬鹿な事ばかり言っている。自由惑星同盟の建国記念日を祝日として入れるんだ、そのあたりを考えて欲しいよ。新帝国は同盟を否定しないという事を意味していると何故理解しない。……資料は机には無いな。何処にしまった? 落ち着け、ヴァレリーが妙な眼で俺を見ている。

これからも同盟の歴史、政治史、社会史、経済の変遷を学問として研究しても全然構わないと言っているんだ。民主共和政も研究してもらって結構だ。その上で何故帝国が民主共和政を否定したか、主権在民を否定したかも研究して貰えば更に結構だ。ルドルフの研究をしても全然構わない。公式の場では敬意を払ってもらう。間違ってもルドルフの糞野郎とは言わ
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