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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十一話 馬堂の手管
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打針が叩槌に叩かれ、腔内に突き出すのを目視する。

「弾殻は?」
「紙を樹脂で固めたものとなっております」


「耐久性は?この打針の劣化が問題だったと聞いていたが」
「若い者に部品――打針を交換する必要が出るまで試させましたがおおよそ八十発までは問題ありません。蓬羽では二百発まで試して問題がなかったとのことです」

「完璧だ、山崎。大変結構!‥‥‥前線で使う物なければね」
 前線で使うのならばどれほどの性能があろうと頑丈で蛮用に耐えなければ話にならない。
 からくりが煤だの泥だので動かなくなるようではまだ今までの前装式の方がマシだったという話になりかねない。


「はい、その所を若様に試していただきたいとの事です。蓬羽の奥方様からもよろしくお伝えくださいとの事です」

「蓬羽が?まぁ実際に使ってからか――杉谷!杉谷小隊長おるか!」

「おります、聯隊長殿」
 本部護衛中隊の内、杉谷が小隊長を務める第一小隊は聯隊長が本部を離れる際、常に護衛役として一個分隊を配置している。
このように彼自身が直接同行していることも多い。
「分かっているな?」

「これですね?‥‥随分と変わっていますね、弾と玉薬を紙で‥‥成程。絡繰頼りとなると少々不安ですな」
 杉谷もまた装填方法に興味を抱いた。
「これを扱うのならば、兵のやり方もまた変わってきますね‥‥‥面白いがひどく手間がかかりますよ」
 今までの〈大協約〉世界における銃兵教育の根幹――すなわち素早い装填方法、撃つときに何に気を配るべきか――をまったく別の物に代えてしまう物だ。
 つまるところアレコレと面倒なほどに新しい物だ、という話である。

「家の若い者に試させた時には確かに煤が面倒でした。針を変える際に煤を掃除する必要がありますな」
 杉谷は再び装填方法を確かめながらうなずいた、どの道、普通の玉薬を使うなら煤が出るのは分かり切った事だ。後は使って確かめるしかない。
「戻ったら試験運用小隊を編成する。人務と相談しろ、委細は貴様と人務に任せる」

「はい、聨隊長殿」

「貴様と小隊はしばらくそれで遊べ、運用法と欠陥を洗い出せ」

「‥‥‥欠陥を多数発見した場合は如何なさいますか?」
 胡散臭げに与えられた施条銃を眺めている杉谷の疑問に豊久はにたりと笑って答える。

「その時はその時だ――あぁそうだ、欠陥を洗い出せた兵には聯隊長から報酬を出す。貴様の功績にもなる。
いいか、杉谷よ。上手くいけば貴様と兵達が軍の新たな枠組みを見せる事になるものだぞ、物になるならそれだけの価値はあると俺は見た」

「これはな、兵器として進化すればそれだけ化ける物だ、その基盤を創るぐらいの気持ちでやれ」

「かしこまりました。どうにか使い物になるよう
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