閑話 ー 二刀流 ー
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のか……などと、訝しんでいるとユーリは、少し言い辛そうに眉を寄せながら口を開いた。
「その、だな。 俺も他人の知らない情報くらい持ってるし……その試作品だってシィを除いたらお前が初めてだ。 だから、無理して……言わなくてもいいと思うぞ」
「え?」
「そのスキルのことだよっ!!」
後半がよく聞き取れずに咄嗟に訊ね返すと何故か怒鳴られた。 解せぬ。 少し顔を朱に染めつつ、そっぽを向くユーリを見てようやく言いたい事を理解した。
(あぁ……そゆこと)
〈二刀流〉という下手なレアアイテムより遥かに貴重な情報を隠匿してる俺を励ましてくれたわけだ。 それも何故か(偽)コーラを通して。 〈ユーリ〉という人間の優しさや思いやりを生で感じ、改めて思った。
(……いい奴じゃん)
いつもは冷たい態度なのに今は優しくされ、背中にむず痒さを覚えて思わず苦笑した。ユーリは、天井を見上げるとどこか遠いところを見ているような表情でポツリと呟いた。
「バレた時がな……若干トラウマになるぞ」
「あ〜……」
第50層ボス戦で前線復帰したと同時に彼の持つ特異なスキルの情報が公となり、それを嗅ぎつけた剣士や情報屋共が大挙してユーリたちのホームに押しかけ、大慌てでエギルの店へと逃げてきたのはよく覚えている。 あの時の恐怖を思い出したのか、三角耳を力なく垂らし、肩を震わせた。 天井から視線を俺へと戻すと、ユーリは柔らかく笑みを浮かべ、言葉を続けた。
「……だから、いいんじゃないか。 無理しなくて。 そりゃ、いつかはバレるだろうけど、公表するのはその時でいいだろ」
ーーそれに、いつかは必ずその二刀流が必要になる時が来るから。
その言葉は、俺の心に暖かく響いた。
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