冴島 大河
第一章 刑期中の悲報
第二話 大阪
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らまだしも裏路地も多く、観光客がよく迷子になる程。
やみくもに捜したって、見つかるのに何日かかるか。
「見当つけずに歩き回るなんて、無謀だぜ兄ちゃん達」
背後からの声に、2人は同時に振り返る。
見覚えの無い姿だった。
季節に合わない黒コートに、フードで見えない顔。
横目で真島を見ると、首を傾げている。
少なくとも、東城会の幹部では無い事が確かだった。
「誰や、あんた?」
「俺は檜山。安心しな、同業者じゃねぇ」
檜山と名乗った男は、両手を挙げて降伏ポーズをとる。
だが安心出来るはずもなく、冴島は身構えたまま動かなかった。
「信じられないって顔してんなぁ。飼い犬はやっぱりお利口だ」
「何やて?」
「東城会という飼い主に飼われてるお前らの事を言ってんだよ、ワン公」
冴島は思わず、檜山に掴みかかる。
胸ぐらを掴んだ瞬間、被っていたフードが剥がれ落ちた。
顔が露わになる。
右眼の下に小さな傷痕をつけた、見た事もない顔だった。
……冴島だけは。
「お、まえ……さが、わ……?」
振り返れば、真島が青い顔をして立っている。
まるで亡霊を見るかのような、恐怖に満ちた顔。
真島のそんな顔を見た事は、たった1度も無かった。
檜山は掴まれた胸ぐらを振りほどき、溜息混じりに息を漏らす。
「誰の事を言ってんだ?さっきも名乗ったが、俺は檜山……」
「それにしても、佐川はんに似過ぎや。ホンマの所、誰やアンタ!?」
明らかに真島の様子がおかしい。
普段は見せない顔、泳ぐ目。
それに真島の口から飛び出した、佐川という名前。
一体過去に、何があったのだろうか。
檜山は肩をすくめ、首を横に振った。
「悪いが、アンタの言う佐川は誰か知らねぇし、俺が佐川という訳でもない。俺は檜山で、ただの情報屋だ」
何も知らない冴島は、困惑する真島がわからないでいた。
だがこのまま黙っているのも、あまりよろしくない。
「俺のツレが勘違いしたようで、すまんな檜山はん」
「いやぁ別にいいんだよ」
「でも、聞かせてくれへんか?何で俺らに近付いた?」
コートのフードを被りなおし、檜山はニヤリと笑う。
その笑みは、思わず2人に悪寒が走る程奇妙で不気味だった。
「お前に興味があったんだよ、冴島大河」
急に飛び出した冴島の名に、2人は驚くことしか出来なかった。
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