暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百五話
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
綺麗なフォームで水場に飛び込んでいく。当然ながら沈んでいくものの、ビート板の浮力によってユウキごと水面に浮かび上がる。

「ぷはぁ!」

「ま……待ちなさいよ! わたしも……」

 先の攻略戦の最中に、どちらが先に泳げるようになるか勝負、などと言い出した手前。セブンもユウキに続いて水場に入ろうとするが、流石に彼女のように飛び込むことはせず、ゆっくりと足をつけて水場に入っていく。

「……あれ、あったかい」

「ホントだ! ……ショウキ、ありがと!」

 足をつけたセブンに飛び込んだユウキ。どちらもが思った感触と違ったのか、不思議そうに自分の肌を濡らす水の感触を確かめていて、ユウキが何かに気づいたようにこちらへ微笑んだ。……わざわざこの層の場所に太陽が南中する時間を調べたとか、そんなことが言えるわけもなく、ユウキの輝くような表情から目を逸らす。

「これなら……っと!」

 暖かい水にいくばくか緊張感が薄れたのか、セブンはゆっくりと水の中へと入っていく。必死にビート板に掴まってはいたが、どうにかこうにか彼女も浮かぶことに成功したらしい。

「じゃあ、その柄を掴んで泳ぐ体勢になって、ばた足でもいいから進んでみてくれ」

 水場の上から二人に指示を出していく。ビート板の胴体に掴まっていた二人は、持ち手となっているビート板の柄を掴むと、身体も自然と浮かんで泳ぐ体勢となっていく。

「ショウキー! この柄のところスッゴく持ちやすいよー!」

「………………まあな」

 謎の柄を絶賛するユウキに対して、俺にはどう答えていいか分からない。あのビート板も一種の日本刀と言えるのか――と頭を抱えていると、二人はビート板を持ちながらも泳ぎだした。

「っと、とっ、と」

「お、泳いでる……ボク泳いでるよ!」

「慣れてきたら水にも顔つけてな」

 まだ少し苦戦しているセブンに対して、ユウキはコツを掴んだようで、なかなかの速さで泳いでいく。元々走るスピードや飛翔するスピードが規格外な彼女にとって、水泳もコツが掴めればあの程度容易いことだろう。ならばセブンを教えるか――と思えば、ユウキに負けじとスピードを増していた。

「……負けないわよ!」

 ……ああ見えて負けん気は強いらしく。根性だけでユウキに肉迫せんと泳ぐセブンに、心中で少しばかり感服しながら――俺は暇になった。水に顔をつけて泳いでいくなど、何も言わずとも徐々に水中に適応していく彼女たちに、特に今は言う必要があることもなく。

「……ん?」

 ――ユウキたちから意識を逸らした故か、一瞬だけ、どこからか視線の気配を感じた。こちらを見ているような、監視しているような……周囲を眺めてはみるが、やはりそんなことをしている者の姿は見えない。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ