第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
シノ
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る。とっさにまだ毒煙の昇ってきていない、一層高い枝の上に避難した。蟲に連れられたキバが自分より更に上空で浮いている。
「大丈夫か、シノ!?」
「ああ……だが、少し吸い込んだようだ」
足が痺れて動かない。術者たるカンクロウはどこか近くで身を潜め、そして〈烏〉を使って攻撃を仕掛けようと隙を見ているはずだ。
そう思ったその時、一つの気配を感じた。振り返る。掌から小さなナイフを生やした烏が腕を振るう。シノの体が真ん中から蟲となって崩壊していく。
「チッ……また蟲かよっ」
だがあの状態でそんなに動けるはずはない。どこだ。どこにいる。混乱しているキバともども視線をめぐらす中、視界に入ったのは〈烏〉の直ぐ頭上で息絶え絶えになっているシノだった。
笑みを浮かべて〈烏〉を操作する。しかし〈烏〉は動かなかった。
「お、おい、どうした!?」
問いかけても〈烏〉が返答できるはずなく。ぎぎぎぎぎ、とその木製の体が虚しいうめき声をたてるばかり。
――くっ……どうなって、ッ!?
ふと見えたのは木製の相棒の肘の中から溢れ出てくる蟲の群れだ。関節に蟲を詰められた所為で動かせなくなったらしい。しかも蟲たちはチャクラ糸を伝ってこちらへやってくる。何故チャクラ糸のありかがわかるんだ。思考を僅かにめぐらしただけで記憶が蘇った。そうだ、この蟲の餌はチャクラ。ならチャクラが視認できるのも問題はない。
このままでは居場所がばれてしまう。チャクラ糸を大げさに揺らしながら断ち切った。かき乱された蟲たちが空を散る。それと同時に、がちゃんと音を立てて<烏>の首がその胴体を離れた。
ひゅーん、と滑稽な音を立てながら空を飛んだ<烏>の頭ががちゃりと形を変え、その口から尖った針が突き出た。傀儡師にとって一度断ち切ったチャクラ糸を結びなおすのは造作もないことだ。その上<烏>は全てのパーツに武器を隠し持つ仕込み傀儡。動きを止めただけで終わりだと思ったら大違いなのである。
たっぷりと毒を塗った針先がシノに迫る。しかし<烏>の首はその寸前で動きを止め、音も無く地面へと落ちていった。
――なに!? いつの間に蟲が……ッチャクラの糸を噛み切られている!?
見下ろした自分の掌を蟲が這っていた。チャクラ糸がいつの間にか切れてしまっている。
「うわぁああああ!!」
茂みから脱する。数多の蟲どもが自分の体を這い上がってくる。生理的嫌悪と何故やられたのかわけもわからずに叫ぶ。
「なんで、どうして!? この蟲たちはどっから沸いてきやがったんだ!!」
静かな口調でシノは説明した。
先ほどの拳をシノはカンクロウに食らわせ損ねたが、目的は殴ることではなく、人間には嗅げない特殊な臭いを発散するメスの蟲をカンクロウの額宛てにつけることだったの
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