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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十四話 裏腹
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 自分の人生はこのまま終わってしまうのだろうか。

 こんな、中途半端で裏腹な想いを抱えたまま、全部、終わってしまうのだろうか。

(アタシ、馬鹿だ……)

 溢れるのは死の恐怖ではなく、今までの後悔。

 自分の感情を押し殺したりしなければ、きっと今は変わっていたのだろう。

 黒鐘に対する想いを抑えなければ、再会した時に仲直りできて、今も彼と雪鳴の三人で一緒に戦っていたのかもしれない。

 雪鳴と黒鐘が仲良くしている光景も見られただろう。

 全部、自分の行動が狂わせてしまった。

 そんなことへの後悔。

 そして反省。

(ごめんなさい、お兄ちゃん)

 心の中で、彼に謝った。

 大好きな彼へ、謝った。

(アタシ、本当はお兄ちゃんのことが大好きなの)

 そして自分の気持ちに正直になった。

 今更、手遅れだと思いながらも。

(ごめんなさい……お兄ちゃん――――)

 ふと浮かんだのは、笑顔でこちらを見つめる黒鐘の姿。

「柚那ぁっ!!」

「え――――!?」

 耳に響くいくつもの斬撃音と、自分の名を呼ぶ聴き慣れた声が届く。

 不意に強く抱きしめられた感覚に、柚那は目を見開いた。

 その人は――――、

「お兄、ちゃん……」

「捕まってろ!!」

「っ!」

 強い口調で言われ、咄嗟に彼の言葉通り、彼の胸に抱きついた。

 懐かしい声、懐かしい匂い、懐かしい温もりが柚那の絶望を振り払っていく。

 心は落ち着きを取り戻し、そして懐かしい鼓動に変わっていく。

 熱を持ち、ほんの少し早い胸の鼓動に――――。

 そんな柚那を抱きしめ、彼は――――小伊坂 黒鐘は、迫る全ての枝を刀に変形したアマネで斬り裂いていく。

 そして接近を諦め、距離を取るために走る。

「お兄ちゃん、どうして……」

 未だ目の前の状況が理解できない中、柚那は黒鐘の顔を見上げるように見つめる。

「……お兄ちゃんなんて、五年ぶりに聞いたよ」

 すると彼は優しい笑みを浮かべてこちらを見つめ返した。

 それは五年が経過して少し大人びたが、五年前と変わらない懐かしく、柚那が大好きな笑顔だった。

 その笑顔にドキッとしつつも、柚那は僅かに余裕ができた思考で問う。

「だ、だから、どうしてここに……?」

「どうしてって、あんなデカイ木が現れたらそりゃ来るだろ?」

「……そっか」

 黒鐘の返答に、柚那は少し残念そうに頷く。

「それに、柚那の声が聴こえたからさ」

「え……」

「声が聞こえたとかそんなんじゃなくて、なんかこう、助けてって聴こえた気がしたんだ」

「っ……」

 
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