第一部
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ろく
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散るだけで終わる。
やがて酸欠から力が抜け落ちたところを見計らい、放り投げる。
勢いよく地面に叩きつけられた小鬼の王様は、蛙が潰されたような音を喉から鳴らして這いつくばる。その姿に王の威厳もクソもあったものではない。
ゼェゼェと、無理矢理酸素を取り込もうとして嗚咽する、無様な姿。
一歩一歩、足音を立てて近付いていけば、引き付けを起こしたように?り上げ、尻餅をついた姿勢で器用に後退していく。
……下らない。何をそんなに熱くなっていたのだろうか。
急速に醒めていく気分が逆に、酷く不快な気持ちにさせる。
目の前で戦意を喪失している生き物に、トロフィーとしての価値もなければ、律儀に向かい合う意味もない。
私は無様に転がる“それ”に、一瞥もくれることなく通りすぎる。まだ確かめなければならないこともあり、光学迷彩装置を起動させ、その姿を消す。
左肩アームを作動させ、プラズマキャスターを背後へ一発。
一瞬明るくなった洞窟内と、何かが飛び散る音が聞こえたが、振り返ることはなかった。
―
やはり、というか何というか……。
私の目の前には、雑に伐採したのであろう不揃いな長さと形の木々で作られた、随分とみすぼらしい檻と、その中で体を丸くして、目立たないようにと小さく座り込んでいる数人の人間の女性達を見やっていた。
ほぼ確信に近い予想ではあったが、これが結構面倒というか、手間というか……。
まあ、このままにして、外にいる小鬼共の餌食にさせるのも忍びない。
幸運なことに、こちらに視線を向けているものは誰もいない。それに、ボロではあるが、何かしら布を体に纏っているので、素っ裸で森を歩くこともないだろう。
運が良ければ、洞窟内に彼女らの衣服もまだあるかもしれない。
プラズマキャスターの威力を絞り、雑に作られている檻に向けて放とうとしたとき、ヘルメットが音を関知する。
それも複数、混乱したような、音割れした叫びや怒号がヘルメットが捕らえていた。
洞窟内外のマッピングは自動的に行われているため、コンピューターガントレットを操作して、洞窟内と外を立体映像として浮かび上がらせる。
ヘルメットの捕らえた音の方角と、マップ情報を照らし合わせれば、洞窟の外からで間違いないようである。
混乱したような悲鳴は、小鬼達のものだ。奴等の言語パターンはデータとして取得してあるので、間違いない。
もう一つの言語パターンは恐らく、人間。ここにいる彼女らを救出するために派遣された、そう考えるのが自然だろう。
その過程で外にいる小鬼達と遭遇し、大方、戦闘にでもなったのだろうが、小鬼達にとって
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