第一部
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ろく
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ガントレットに収納されている、リストブレイドを伸ばし、なるべく痛みのないよう、心臓を一突きにする。
ズブリと抵抗もなく沈んでいく、慣れ親しんだ刃が肉に沈んでいく感触ではあるが、こういう場面は何時になっても慣れることはない。
彼女は一度小さく震え、静かに息を引き取った。
左手を離すときに瞼が閉じていることを確認し、痩せ細った体から引き抜いたリストブレイドで両手首の縄を切り、そっと地面へ寝かせる。
この星の宗教や作法は知らないので、取り合えず彼女の両手を胸の上で合わせてから立ち上がる。
「よお、糞野郎」
振り向くことなく背後の存在に罵声を浴びせる。
背後から不意打ち狙ってるのなんかバレバレなんだよ。
リストブレイドを収納し、ゆっくりと振り向く。さあ、どんなご尊顔なのか拝んでやろうじゃないか。
こちらにメイスを振り上げた状態で固まっている元凶を睨み付ける。
身長は大きな小鬼よりも多少大きい、170センチといったところか。
特徴的なのは、通常の大きな小鬼の額にコブのような角が二つであったのに対し、目の前のこいつはまるで冠のようにコブがぐるっと頭を一回りしている。
それに、大きな小鬼よりも筋肉質であるが、装備しているものは大きな小鬼とそう代わりない。
見た感じ、小鬼の王様とかいう奴か。
全く。
こういったとき前世の記憶があるというのは非常に厄介だ。同じ姿形をしている、たったそれだけで、どうにも必要以上に力んでしまう。
「おら、かかって来いよ色男」
伝わるなどとは微塵も思ってないが、ぐるりと首を回しながら言い放つ私の態度に、挑発されているということは理解できたようだ。
耳障りな雄叫びを上げて、愚直に突っ込んでくる。
私はそこから一歩も動くことなく、それを待ち構える形をとる。
小鬼の王様は腰だめにメイスを構え、私の腹部へと振り抜いてくる。
それを視界に納めながらも、私は指の一つも動かすことをせず、メイスが私の腹を殴る瞬間を見届ける。
ボギンッと洞窟内に反響した音は、木の柄から折れたメイスである。
スラッグ弾を至近距離で数発受けようが、止血で済ませるような生物だぞ、私は。
鍛え抜かれた私のシックスパックに、そんな粗末なメイスの一撃が傷を付けようなど笑止千万。
小鬼の王様の首根っこを掴み、目の前にぶら下げる。
苦悶に叫び、振りほどこうと暴れるが、私の体はびくともしない。それに業を煮やしたのか、折れたメイスの柄で万力のように締め上げている腕を突き刺してくるが、打った先から木片が飛び
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