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トンデケ
第十話 地球の出産
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終わった。誰もがそう確信した。
気がつくと、サングラスは外れていた。
疲れがどっと押し寄せ、百香は今にも失神しそうだった。
武井とキャシーに支えられながら、
四つん這いになって、ゆっくり体を横に倒した。

ぼんやりした頭の中で、またあの声がした。

『みなさん、よくやってくれました。感謝します。
 疲れたでしょう。これを飲んで休んでください。』

握った拳を広げると、
いつの間に渡されたのか、小さな赤い錠剤が一粒。
恐る恐る舌の上にのせてみる。
上あごが触れた瞬間、じゅわっと液体が溢れ出た。
甘酸っぱい。アセロラのような味がする。
液体は口内に膜を張るように広がり、乾いた喉を一瞬にして潤す。
同時にそれまでの疲労感がみるみる薄れて、体が楽になっていくのが分かる。
栄養ドリンクのようなものだろうか。
と思ったところで、百香の意識は遠のいた。




黄色や白の花が咲く広大な花畑を一人歩く百香。
誰かが向こうで手を振っているのが見える。
白いワンピースの女性、誰だろう…。

「ママ? そうよ、ママだわ!
 後ろにいるのは… ああ、おばあちゃん!!
 あっ、やだ、叔母さんもいるじゃない!
 なあんだ、みんな一緒だったのね。」

懐かしさと幸福感で涙が溢れる。

足元を見ると… 
摩周がまん丸い目で、こっちを見上げているではないか。

「まあ、摩周〜!!」

声をかけた途端、摩周がふわふわ〜と宙に浮いた。

「あれ? 摩周… あなた、飛んでるの?」 

摩周の体がシャボン玉に包まれ、みるみる上昇していく。

「ああん待って! 行かないで!」 

百香の体もいつの間にか宙に浮いていた。
シャボン玉に包まれ、ふわふわと地上から離れていく。
摩周の後について飛んでいくと、険しい山の上空にきた。
山頂すれすれを飛びながらやがて広い平野に出た。
平野を這うように、川がくねくねと光っている。

「怖い! ずいぶん高いところを飛んでるんだわ。
 シャボン玉、割れないかしら…」

すると、シャボン玉はゆっくり下降しはじめ、川のほとりに静かに着地した。
「パチン パチン」着地と同時にシャボン玉が弾けた。

ここは船着場か…。
大勢の人たちが行列を作っている。
その中の一人がこちらを向いた。

「え? 楠田博士? そうよ、博士だわ。
 やだ、どうしてここに…」

楠田に近づこうとした時、いきなり後ろから強い力で腕をがっちり掴まれた。

「痛い! な、なに? なによ、なんなのよ!」

近くの小屋へ引きずり込まれ、振り向いた男の顔を見て百香はぞっとした。
刺すようにこちらを睨みつける目。

「辰郎…?」

「お前、俺を殺したよな。
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