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八神家の養父切嗣
四十一話:離別
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とするのか。弱みを見せたところで自分の愛は変わらぬというのに。

「私も今まで数え切れない数の主を食い殺してきたが……慣れたことなどない」
【…………】
「優しいお前が慣れているはずがない」

 誰かを傷つけることに慣れている人間が世界を救おうなどと願うはずがない。人が死ぬ光景に慣れることができないから、許すことができないからこうして壊れた願いを持つ。自分でそう叫んでもなおこの男は自分を優しくなどないと自己嫌悪する。自己嫌悪することで自分の精神を保とうとする。壊れた幻想を追うことで自分を奮い立たせる。その先に何もないと既に理解しているというのに。

【……ごめん】

 何に対する謝罪かも言わぬままに切嗣は一言呟き通信を切る。一人取り残されたアインスは溜息を吐き、既に遠くなった機動六課を眺める。遅れてやってきたライトニングの二人が戦闘を行っているようであるが勝ち目もなければ既に争う理由もない。

 既に六課は破壊され、守るべき王もこうしてこちらの手の内にある。これ以上人間に対して破壊行為を行うわけでもない。もはや争う必要などないのだ。その先はただの無益な殺し合いにしかならない。ある意味で人間らしいと言えば人間らしいのだがやはり物悲しい。

「人は大切な者が奪われれば怒りと憎しみを抱く。当たり前だが……それが新たな争いの芽になると思うと心からの歓迎はできないな」

 怒りや憎しみという感情なくして人は語れない。だから受け入れなければならない。しかし、そのような悲しいものを見続けるのは簡単なことではない。受け入れようとしても心のどこかが受け入れられないと高らかに声を上げるのだ。悪の心もあって当然の世界だというのに現実の醜さを見続けることが出来ずに嫌悪してしまう。

「それも人か、ままならないものだな……。せめて救いがあれば良いのだが」

 アインスは祈るように瞳を閉じる。どうか愛する家族に救いが訪れるようにと。

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