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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第140話 蛇神顕現
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負の感情――

 この気配は覚えがある。これは――

「弓月さん、あんたは――」

 蟲使い。
 直接、相対すのは多分初めて。但し、蟲と戦った事はある。それは今年の二月、ハルヒと別れた後に訪れた学校。今にして思えば、あの夜に訪れた学校が今、俺が通っている北高校であった事が分かる。
 そこに現われた化け百足。あれが蠱毒(こどく)によって作り出された蟲と戦った最初だと思う。

「もうこちらを向いても大丈夫ですよ、武神さん」

 その結界の中に居る限り、あなたがこの子たちに襲われる事はありませんから。
 まるで何事もなかったかのような雰囲気で話し掛けて来る弓月さん。

 ……成るほど、彼女がハルケギニアの妖精女王に転生したのか、妖精女王からこちらに転生したのか、その辺りについては未だ定かではありませんが、魂の部分では異世界同位体などではなく、同一の存在である可能性の方が高い事は理解出来ました。
 何故ならば今回の生命で彼女が、蟲を使って俺たちを守ってくれた事がありましたから。その時は蟲も支配する妖精の女王であるが故に、そのような術の行使も可能なのだろうと漠然と考えたのですが、あの能力はむしろ彼女が魂に刻み込んだ能力だった……と言う事なのでしょう。
 振り返った俺。その事に因って、既に、後ろを向いて居た段階で気配では感じていた存在を更に強く感じるように成る。

 大地を這う巨大な気配。鎧を着込んだ武者の如き不穏な音を発しているのは、間違いなく化け百足。視力を失っている為に確実とは言えませんが、それでも大きさは、十メートルクラスはあるように感じる。
 そして、彼女の周囲をゆらり、ゆらりと覆うような陰の気の気配。それは彼女の周囲を飛び交う陰火のように感じて居るモノ。こちらは小さく、大きさもそれぞれが五センチ程度。多分、蝶か蛾のような蟲だと思われる。
 但し、こちらは数が多い。おそらく、数千以上。少なくとも、今、弓月さんの気配を直接感じる事は出来ないぐらいに、彼女の周囲を取り巻いている事は間違いない。

 彼女……今の弓月桜を、現実の瞳で見つめる事が出来ない事を少し感謝する俺。
 しかし――

「蟲たちと感覚の共有。具体的には、此方の意志を遠方の人間に伝える事は出来るのか?」

 しかし、感傷は一瞬。今はそんな事に費やす時間はない。
 おそらく、彼女の絶望に近い諦めはこの蟲たちに起因する物なのでしょう。蟲を飼っている壺やヒョウタンの類を身に着けていない彼女が、今、この場所に蟲を召喚して見せた。更に、その召喚の現場を俺に見ないでくれと頼み込んだ上で。
 俺の知識の中に存在している蟲使いの中には、自らの体内に――
 但し、その事を哀しみ、傷をなめ合ってどうにか成る物でもない。魔法に――。世界の裏側に関わるようにな
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