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Eipic1-C移ろいゆく季節〜Sie ist ein Ritter〜
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士ゼスト・・・」

父様の友人でもあり、わたしの剣技を鍛える模擬戦の相手として何度も力を貸してくれた騎士。騎士ゼストは、あの事件から今日までずっと意識を取り戻さない。怪我の方はもう完治してる。けど目覚めない。その理由として、担当医の話だと精神的な問題だっていうことみたい。目覚めたくないから目覚めない、とのこと。

「やっぱりまだ・・・?」

「ああ。一向に目覚める気配がないとのことだ。・・・意識不明者を強制的に目覚めさせるなんて、魔法でも魔術でも存在しないからな。グランガイツ一尉の意思を信じるしかない・・・」

ルシルが改めて病室に入って行くから、わたしも続いて入る。目の前のベッドに横たわる騎士ゼストは、普通に眠っているかのような顔で、声を掛ければ起きそうなものなのに。この一般入院病棟に移されてから、わたしや父様、教会騎士団の関係者も度々お見舞いに来てる。そのたびに思う。すぐに目覚めてくれるって。だけど・・・。

「お久しぶりです、騎士ゼスト。イリスです。・・・騎士ゼスト。あなたはまだリタイアするには早いですよ。まだ、何も終わってないです。休むのは、部下の仇を捕まえてからでも遅くはないです」

「仇を捕まえる、か。仇討ちじゃないんだな・・・」

ルシルがポツリと言った。そんなルシルに、わたしは自分の考えを伝えてみる。

「どれだけ理不尽に、不条理に大切な人を奪われちゃっても、局員である以上は、ううん、人である以上は、やっぱり被疑者を殺害することは絶対に許されないって思う。たとえどんな理由があっても、人殺しだけはダメなんだ。法によって裁いて罪を償わせる。それが、わたし達の仕事だよ」

人殺しだけはやっちゃダメ。どれだけ辛くても、ソイツを殺すことで自分も罪に染まるのは悲しいことだって。それに、殺して楽にするより、何年、何十年って時間を掛けてじっくりと罪を償わせてやる方が良いって思う。

「そうか・・・」

「うん。そうだよ」

それっきり黙るルシルに「変な気を起しちゃダメだからね」釘を刺しておく。ルシルには、殺したいほどに憎んでる相手――プライソンが居る。首都防衛隊とルシルは、アイツのアジトに潜入捜査をして、そして迎撃された。
騎士ゼストは今なお意識不明、クイント准陸尉は殉職、メガーヌ准陸尉はMIAだけど、実質殉職扱い。他の隊員もみんな殉職してる。ルシルには動機がある。ここまでされて、ルシルはプライソンをただ捕まえるだけに留めるだろうか。

(ううん。ルシルならきっと大丈夫。信じよう。ルシルを・・・)

「・・・俺がレーゼフェアとフィヨルツェンを早く撃破していれば・・・!」

ルシルはあの日の事を今でも強く後悔して、自分を責め立てている。その負い目が晴れるのは、プライソンを逮捕できた時だけ、だと思う。
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