暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第229話 心の悲鳴
[8/15]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
も、ずっと彼は笑ってくれているだろうか。……決して私のために、無理をせず、自然な笑顔を見せてくれるだろうか。

 隼人は本当に優しい。だからこそ、決して表には出さないって思える。
 だけど……、だからこそ…………。


「隼人君を苦しめるくらいなら……っ、私のせいで隼人君を苦しめる結果になる位なら……わたし、わたしっ………っ!!」

 
 ぼろぼろ……と涙を零し、嗚咽で続きの言葉を言えない玲奈。

 そこまで来た所で、明日奈は玲奈の身体をぎゅっ、と抱きしめた。

「わ、わたし……っ、わたしは……っ」
「大丈夫。レイ、大丈夫だから……」

 明日奈は、ただただ、玲奈の身体を抱きしめ続けた。
 そこから先の言葉は、明日奈は訊きたくない。恐らくは京子も何をいうか判っただろうから、好ましくはない筈だ。先程から、表情こそは変わらないものの、明日奈は感じたから。苦難を乗り越えて、2人は一緒になることが出来た。本当の意味で心を通わせることが出来た。

 だからこそ、隼人にとっても玲奈にとっても、それだけは、そこから先の言葉は言ってはいけない言葉だから。

「ありがとう。レイ」
「うっ……ううっ、だ、だって、だって……っ お、おかしいよ。こんなのっ……っ、なんで、なんで、好きになった人と、一緒にいられないの……っ? それが、わるい、こと、なの……? だって、だって、わたし、わたしもずっと、見てきたんだよ? おねえちゃんや、キリトぐん、のことも……っ」
「うん……うん………」

 明日奈の胸の中で泣き続ける玲奈。そして、その優しさゆえに、流している涙を止めてあげたくて、明日奈は何度も玲奈の背中を摩り続けた。

 そして、玲奈の背中を摩りつつ、明日奈は京子を見た。

「……レイを寝室まで連れて行きます」
「ええ。判ったわ」

 この時ばかりは、京子は反論等はしなかった。だが、それでも余裕さえある表情は消えてなかった。

 続けてワインを飲む姿を見て、明日奈は判った。今回の玲奈のこれ(・・)は、子供の癇癪。少々遅れた反抗期、程度にしか思ってなかったのかもしれない。直ぐにいつも通りになる、とも考えているかもしれない。
 でもなければ、母にとっての(・・・・・・)最高のキャリア(・・・・・・・)が消えてなくなってしまうのだから。それは絶対に避けたいはずだから。

 そんなどこまでも冷ややかささえ感じる母を見て、明日奈はドアに手をかけた所で、最後にす、っと息を吸い込んだ。

 玲奈が母にぶつかった。自分が言いたかったことの全てを言ってくれたかもしれない。……自分には余裕なんかないのに。

 そんな妹を見つつ、明日奈は胸の奥深くにわだかまっているものを最後にぶつけた。

「……キャリアを重視する
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ