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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十三話 雪鳴なりの決着
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でも、私が強かったら黒鐘を苦しませなかったし、柚那があなたを恨むことなんてなかった」

 柚那の優しさも、黒鐘の優しさも知ってる。

 だけど五年前の私は、そんな二人の優しさから目をそらした。

 柚那がいるのに、独りだと思い込んだ。

 黒鐘は家族でもなければ恋人のように親しい仲でもないのに、独りにされたと思い込んだ。

 結果、柚那は黒鐘を恨み、黒鐘一人に私と柚那の想いを抱え込ませてしまった。

 それは全部、私の責任。

「いや、俺が」・「いいえ、私が」

「いや、絶対に俺が」・「いいえ、絶対に私が」

「なんで自分のせいにする!?」・「なんで自分のせいにするの!?」

「だって俺が悪いだろ!?」・「だって私が悪いでしょ!?」

「「………………」」

 ここが病院で、病室であることも忘れ、私と黒鐘は怒鳴り合う。

 こうして声を張ったのは何年ぶりだろう。

 ふとそう思いながら、私と黒鐘は睨み合った。

 黒鐘と喧嘩をしたのはこれが初めて。

 こんなにも本音をぶつけたのも初めてで、気づくと――――、

「……ははっ」

「……ふふっ」

 お互いに恥ずかしくなって、笑い出してしまった。

 さっきまで罪悪感や後悔、怒り、悲しみ、孤独……色んな感情が渦巻いていたのに、こうして声を上げたら霧散してしまった。

 残ったのは不思議なまでの清々しさで、きっと黒鐘も同じ状態なのだろう。

 普段あまり表情が表に出ない私ですら、微笑みを抑えきれなかった。

 そして色々スッキリしてみて、改めて気づいたことがある。

 それもまた黒鐘も同じと言った表情。

「そうか、俺達はきっと――――」

「ええ、私達はきっと――――」

 五年間、色んな想いが渦巻く日々だった。

 考え方、感じ方が違う日々で起こったことはとても単純なこと。

 私と黒鐘は違う考え方、違う感じ方でたどり着いた結論を口にする。

「「ただ、ほんの少し空回りしただけ」」

 ほんの少しの空回りは、しかし私たちを苦しめるには充分だった。

 だけど私と黒鐘はこうして言葉を交えて、ぶつけ合って、分かり合えた。

 たったそれだけのことをしてこなかったから、こうして間違えてしまった。

 きっとそういうこと。

 あとは、

「あとは、柚那の誤解を解かないとな」

「私も手伝う」

「ああ、頼りにしてる」

 私のために怒ってくれた妹を止めるのは、怒らせた黒鐘だけのことじゃない。

 姉である私もまた、柚那を止める責任がある。

 私と黒鐘は決意を確かめ合い、そして微笑みあった。

「ただ、やっぱり最後に一回、ちゃんと謝らせてくれ」

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