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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十三話 雪鳴なりの決着
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らし、俯いてしまう。

「雪鳴、本当にごめんな」

 私の心情を察してか、彼は謝罪の言葉を発し、そして深々と頭を下げた。

 そこには心の底からの反省と言う想いが伝わって、私を更に混乱させる。

「五年前、俺は雪鳴や柚那にこのことを言えなかった。 気にして欲しくなかったから、心配して欲しくなかったから、失ったって……自覚したくなかったから」

 黒鐘の視線がほんの僅か、下に落ちた。

 そして言葉から伝わる、五年前の黒鐘の姿。

 五歳〜六歳で両親を亡くし、姉が意識不明に陥って黒鐘は一人になった。

 あの時のその時、私や柚那が側にいたら彼は甘えてくれたと思う。

 一番辛いその時に居てくれる人に甘えたくなる気持ちは、私もよく知ってる。

 だけど私たちは『その時』に居てあげられなかった。

 結果、黒鐘は辛いその時を一人で乗り越えてしまい、私たちに甘えると言う選択肢を捨ててしまった。

 だとしたらきっと、

「黒鐘は、何も悪くない」

 私は黒鐘の顔を真っ直ぐ見つめた。

 彼の揺れる瞳が、少しずつ私に焦点を合わせて、互いの視線が重なる。

 きっと誰かが悪いなんてことはないんだと思う。

 黒鐘は被害者で、私たちは部外者。

 五年前、黒鐘が一度に家族を失って、一人残されてしまった。

 五年前、私と柚那は黒鐘の帰りをずっと待って、孤独に耐えていた。

 それは私達三人の物語に見えて、本当は別々のお話し。

 なのに私達がいつまでも折り合いをつけられなかったから、黒鐘を苦しめる結果になった。

 自分のせいで私たちを苦しめた、なんて考えなくいいのに。

「五年前、私は確かに寂しかった。 嫌われたのかなって、ずっと思ってた。 でも、たった半年の関係だからっていつの日か折り合いをつけて、修練に励んだつもり……だったの」

 結局、折り合いなんてつけられなかった。

 修練の理由も、いつか彼と再会しても隣に立てるくらい強くなりたかったから。

 彼が教えてくれた、私だけの強さを信じて頑張ってきた。

 今日までの全ては、黒鐘を想う気持ちがあってこそのもの。

 だとしたら私は結局、折り合いなんてつけられなかった。

「私がいつまでも折り合いをつけられなかったから、柚那は黒鐘を恨んでしまった。 私の迷いが、柚那を変えた」

「いや、それは違う」

 対して彼もまた、ハッキリと否定した。

「柚那が俺を恨むのは、柚那が雪鳴のことを大切に想ってるからだ」

「その優しさが、私の迷いであなたを恨ませる結果になった」

「家族が家族を大事に想うのは当然だ。 仮に俺が柚那の立場だったとしても、きっと俺みたいな奴は許さなかった」


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