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第四章

「いや、先生変わりましたね」
 家に来ていた女性の編集者が彼女にお茶を御馳走されながら言っていた。今彼女は香苗が出したロイヤルミルクティーを飲んでいた。
「それもかなり」
「そうですか?」
「ええ、変わりましたよ」
 このことをまた言う編集者だった。見れば彼女は三十代半ばといったところだ。
「全くの別人です」
「昔はあんな感じだったんですよ」
「それは聞いたことがあります」
 かつての政行のことについては彼女も聞いていたようだ。
「それでも実際に見ると」
「違いますか」
「正直惚れてしまいそうです」
「あら、でもそれは」
「はい、わかっています」
 これはジョークの言葉だ。彼が結婚していることもその相手が今目の前にいる香苗であることもわかっている。それでこんな話を本気でする者はいない。
「私も立派な主人がいますので」
「ですね」
「それでも。本当に先生は」
 そのうえでまた政行のことに話を及ぼさせるのだった。
「変わりましたね。作品にも出ています」
「作品にもですか」
「はい」
 話はそのことについて及んでいた。
「かなり出ています。ワイルドさが加わりました」
「ワイルドですか」
「今まではバランスの取れた作品でしたけれどワイルドさがなかったんです」
 政行の作品の傾向だった。
「優等生的な作品で。もっと野性味が欲しいかなと思っていたら」
「それも加わったと」
「それでいて今までの作風も健在です」
 つまりいいことづくめであった。
「非常にいい感じになっています」
「そうですか。それは何よりです」
 香苗はにこりと笑って彼女の言葉に応えた。
「主人も喜んでいますね」
「はい。ただ」
 だがここで。編集者の言葉の感じが変わった。
「性格も変わられましたね」
「はい」
 ここで香苗の顔もまた変わった。少し曇ったのであった。
「これは考えていませんでした」
「そうですか」
 政行は今までの野暮ったい性格が消えたのだ。そのかわり一見すれば傲岸不遜で態度の大きな男になっていた。発言もかなり変わっていた。
「俺があの出版社を守ってるんだ」
 ある時インタヴューでこんなことを言っていた。
「所謂用心棒ってやつだな」
 これは今までの彼からは考えられない言葉だった。
「御前の願いは聞く!」
 ある時はこうも言うのだった。古い付き合いの編集者の頼みを聞いた時だ。
「喜んで書かせてもらうぞ」
 こんな感じに変わっていた。まるで別人だ。こんな夫、父を見て香苗も子供達も驚きを通り越して呆れてしまっていたのだった。
「何かお父さんってさ」
「最近別人みたいよ」
 幸一と朝香はこう香苗に対して言うのだった。
「何でこうまで変わったの?」
「お母さんのプロデュー
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