79話 安寧
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すか?御意に!
はい、ごろーん!
・・・・
不意に意識が戻る。直前に何をやっていたか思い出せないが……頭でも打ったのか?その割には頭が痛いわけでも眩暈がするわけでもないし……。クリアな視界、場所は外。
「あ、ククールも起きたのね」
「『も』?」
「あんたが気絶してる間、いつも以上にトウカが頑張って、そしてトウカも倒れちゃったのよ。もうとっくに起きたけど」
ぴしっと指さされた隣にはどこかぽやぽやとした表情のトウカが座っていて……なんだかとてもねむそうに見える。トウカは俺達の視線を浴びても暫くぼんやりしていたがハッと目に光を宿すとこちらに眩しいばかりの笑顔を向けてくれた。
「おはようククール!」
「おはよう……?」
「ホント大変だったんだからね!死ぬかと思ったよ!ククール、君ってホント偉大だよ……今までありがとう!これからよろしく!エルトにのど飴あげたけどこれからはククールにもあげないとね!」
眠そうだったのはどこにいったのか。にこにこ笑ってテンションの高い様子はいつも通りだった。……トウカもようやく俺の苦労を分かってくれたのか。戻りたくもないがもしも俺が聖堂騎士に戻ったとしたら問答無用で全員を倒せるぐらいには鍛え上げられたからな……回復しながら攻撃できる自信がある。つまりは負けない。そんな俺でもこいつらの回復を完璧にはできない。俺は慣れててこれだから他だったら使い物にもならないってことだろう。
ふと話題にあがったエルトを見れば今にも散ってしまいそうな儚い微笑みを浮かべて槍をさり気なく杖にして立っていた。微かに膝が震えている。座ったら立てないんだろう。……苦労をかけたようだ。だが俺は知っている。エルトも充分化物クラスの人間であることを。そこまでエルトがボロボロになったのだから、エルトも十二分に暴れたことだろう。
今にも絶えそうなエルトが物言いたげな顔をしている。
「エルト」
「ククール、君が死ななくて本当に良かった」
「……切実なこって」
エルトの声がなんとも泣きそうに聞こえたのは彼の名誉のためにスルーということで対処させてもらった。
トウカにもらったのど飴を握りしめた今のエルトの精神状態はよく理解できる。ベホマの「ベ」を言った瞬間に発狂する。回復魔法だけでもないが、自分の双肩に味方の命がかかっているという極度の緊張と頭が焼き切れそうになるほどの魔法の連打、そして目の前で無茶をする剣士。これが合わされば今までの俺と同様胃薬なしでは生活できなくなるはずだ。……胃薬を意識したら胃が痛くなってきた。
なにしろ本人にこれからもよろしくと言われてしまったのだから。逃げられない。逃げるつもりもないが。この立場を譲るつもりも。ただ最初の何も知らな
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