78話 死闘
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静になっていくのは死にかけているから?脳内麻薬の出すぎかもしれない。後ろから飛んでくる回復魔法なんてこの状況では焼け石に水でしかないのに不意に痛みが引いていった気がして、執念深く私を離さないアルゴングレートを私は「素手で小さい手をもいでやった」。餅でも引っ張ったみたいに簡単だった。
ギャァァアアアアッッ!!!!
醜い雄叫びが、いや単なる悲鳴が木々や岩を揺らすように鳴り響く。痛すぎてハイ、としか言いようもない私は剣を拾い上げて暴れる化物の首に突き刺す。今度はバターに穴を開けるぐらい簡単だった。……それでもこいつは生きている。なんて生命力。せめてアルゴンハートを寄越してくれたら逃がすのに。
血が足りない。視界が暗い。ふらふらする。分かってはいるけど休憩なんてできないし、これでも生きてるこいつを殺さなきゃ安寧なんてない。ドルマゲスはもっと強いだろうからこんな所でやられていられないのに!
全体重を、全力で。流石に地に伏せたアルゴングレートを踏み砕く。その頭を、脳みその在処を。頭を砕かれて生きていた生物……この程度巨大な生物なら、いまいとばかりに本気で。
ぐしゃり。音としては、パン、となんだか軽い音。
大量の脳漿が噴出する。の割には手応えはくるみを踏んだ時よりよっぽど軽くて風船を踏みつぶしたような感じ。私を中心に吹き上がる液体。血よりも吐き気をもよおしそうな惨状が出来上がっていく。どろりとブーツを汚し、巨体は地に沈んでいく。……最初からこうすればよかった?
その時私はうっかり忘れていたことが二つあったんだ。ひとつは……天然記念物アルゴリザードを殺さないようにすること。そしてもうひとつは……貧血のときに無理に動いたらどうなるか、ということ。
私の意識もその瞬間、遠のいていった。二人分の面倒を見なきゃいけないエルト……頑張ってね。
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