暁 〜小説投稿サイト〜
剣士さんとドラクエ[
78話 死闘
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「くくー……る」

 すべての頼りであるククールがやられてしまったなんて。手酷く、すら生ぬるい表現だ。巨体に飛びかかられ、体を地面に叩きつけられ、鮮血を地面に、そしてアルゴングレートの白い腹に飛び散らせて。結われた銀色の長い髪が赤く染まっていく。みるみる、染まっていく。ククールの一番近くにいたトウカの掠れた声が虚しく響き、その生死を危ぶませる。

 でも、流石というかトウカは何時までも呆けてなんていなかった。あの巨体に吹き飛ばされ、ククールが気絶する前にかけられた回復呪文で、一人、癒しきれていない体で、大剣を投げ捨てて彼女は、大剣より短く細い腰の剣を両手で構えて突っ走って、深々と腹を切りつける。連撃が、遠慮の消し飛んだトウカの攻撃はアルゴングレートの体の一部をミンチにする。アルゴングレートの、僕達の返り血で染まった腹をアルゴングレートの血で染め上げていく。

 そして、当然ながら痛みと怒りで滅茶苦茶に暴れるアルゴングレートの周囲から大きく距離を取って僕達は退避した。トウカも、回復魔法に専念できる者がいない今、駆けてきた。気絶したままのククールを背負って。

「エルトッ」
「勿論」
「任せたッ!」

 つまり僕が……ククールが仲間になる前のように魔法を使う番だ。使えない王子が逃げ出すことも出来ずに右往左往するのを邪魔に思いながら飛び出していったトウカ、後ろに続いたヤンガス、何時もより距離をさらにとった後方のゼシカをみんな把握しなくちゃいけない。

 優先すべきは一番の重傷のククールの回復。出来ることなら起きて復帰して欲しいけど、今はそんなことすら願っている暇はない。取り敢えず命の危機を何とかすべきなんだ。

 ……僕にはククールのようにまとめて皆の傷を癒す「ベホマラー」は使えない。ククールばっかりに構っていられないのが歯がゆい。ベホマを唱えている瞬間にもヤンガスがしっぽの攻撃に当たり、ヤンガスを癒せばトウカが飛びかかられてふらついている。

 急がないと、と考えている間にも盾さえ捨ててトウカが斬りこみ、噛まれそうになっては避け、次にヤンガスが斧で切りかかるフリをしてうまく尻尾を捕まえて抑える刹那の間にトウカが切り刻み……と前衛の素晴らしいコンビネーション。

 二人の素晴らしいコンビネーションも、ヤンガスが尻尾を受け止め損ねれば骨が何本も砕かれる大怪我に繋がるし、たとえ受け止められても腕が無事では済まないだろう。斬り込んでいくトウカだって無事では済まなかった。この方法をする前よりは怪我は減っていたものの……。

 それも……すべて僕の手にかかっている。削りきるか、全滅かも。なんて重いんだろう。みんなの命を預かって……前衛で預かるのとはまた違う重みだった。

 息ぴったりにゼシカが前衛二人の間をぬってメラミ、隙を見
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ