77話 無体
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幸いなことにチャゴス王子は命令に当然のことながら従わず乗りこなせない現状よりも名声の方に意識がいっていて、あっさりと陛下の降りるように懇願していた言葉に従った。
その瞬間、トウカは僕の腕からするりと抜け出して姫に駆け寄り、不審に思われないように奴から距離を離してからお怪我はありませんか、お助けすることが出来ず申し訳ありませんと必死になっていた。アモールの水の瓶を開ける手が震えていて、それは怒りにも取れたけど、僕も味わった無力さが原因かもしれない、と思えてしまう。
姫もどうにもならなかった理由を分かっておられるようで責められる様子はなかったけど……当たり前だけど、ずいぶんと怯えられている。
チャゴス王子……ヤンガスが見つけた巨大な……トウカの言ってたボスアルゴリザードに一人で挑ませてやろうか。それが本来の形だし。トウカが挑まないはずないから無理なことだけど!
「……何をしている!さっさとそいつを仕留めるぞ!」
この後に及んで空気を読めないチャゴス王子は僕らを叱咤し、急がせた。ヤンガスも詳しくは分かっていないもののこの空気の原因が王子であることはすぐに見て取れ、元々強面なのにさらに怒りで表情がすごいことになっていた。それに今度は王子が怯えている様子はヤンガスには悪いけどスカッとするね。
・・・・
巨大なアルゴリザード。もはやアルゴングレートか?こいつ。俺達の次の獲物のそいつは岩山の穴に丸まって眠りこけていた。残念なことにそいつがそこにいては戦えない。だからあのジェロの実というこいつらの好物でまた誘き寄せるしかない。非常に面倒だが。……やるのは俺じゃないけども。
と、エルトもゼシカもヤンガスも考えたんだろう。一番前を歩く勇敢なトウカに向けて実の生えているところまで引き返すことを伝えようとした矢先……トウカは以前並べて見せたようにとても身軽な身とはいえない装備でいともやすやすと穴に飛び込むと、一トンぐらいは平気でありそうなアルゴングレートを後ろから思いっきり、岩山の下に蹴りだした。
……強引なレディだ。眠っているところをいきなり蹴り出されるというまず普通はありえないことにアルゴングレートは驚いたのか、悲鳴をあげて無様に落ち、隙だらけ。そして体制を整える暇さえ与えずトウカは飛び乗って、ぐさりとぽっこり膨らんだ腹を刺す。鮮血が散った。顔に血がかかるのも構わず、トウカは笑う。
そして黒い風のように痛みであばれまわるのに巻き込まれぬよう大きく跳躍して避けていた。相変わらず……アクティブだ。
「無茶しないで!」
「これしき無茶じゃない!」
突然の痛みで暴れ回るアルゴングレートの周りの大地は抉れ、尻尾がぶつかった岩山が崩れる様子は肝が冷える。あれに当たったら……打たれ強いヤンガスでも無事
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