73話 鬱憤
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は血を噴水のように流した無惨な魔物の姿だけがそこに残っているのだ。たまに囲まれて一撃を入れられたとしても誰かしらの……主に俺だと思うが……回復魔法にすぐに元の俊敏な動きを取り戻し、にこにこと笑いながら礼を言う。
その間にもざしゅ、と気持ちのいいほど潔の良い剣撃は邪悪な生を散らしていくのだ。すぐに青い光となって消えるとはいえ、魔物の内臓やら異臭を撒き散らす肉片やら、どす黒い血やらを間近に天使のような笑みを浮かべる彼女は戦乙女にふさわしく……。
「どうしたの、ククール。目が死んでるわよ」
「……あ、あぁ」
「回復魔法、変わってあげれたら良かったわね。でもあたしには出来ないから頑張れとしか言えないけど……」
「心配はいらない、ありがとう」
「……、エルト、休憩入れましょう」
なんだというのか。休憩!と小さな姿になったトウカの方にエルトが叫べば瞬く間に彼女はこっちに帰ってきて、きらきら光る笑みを浮かべたまま疲れちゃった?なんて聞くのだ。……俺は夢でも見てるんじゃないだろうか。昨日まで、トウカは男で、この感情は夢で血迷っただけだと思っていたのに。
彼女が彼女だと分かった瞬間、これか。ある意味では自分に呆れるほど。
でも現実は非情であり、彼女がぼんやりしたままの俺を見て、心配して背負おうか、なんて申し出るほど腑抜けていると思われるほど。彼女を護るナイトになれるのだろうか、と叶いもしないようなことに対する願望がちらつく。
「あ!」
「どうしたの、トウ……」
「ククールのおかげで腕持ってかれずにさっき済んでさ!いつもありがとうね!」
あの馬鹿力にバイキルトなんてずるいや、と地団駄を踏みながら彼女は俺を見上げる。
……ククール、しっかりしてよ。
同じくアルトの声が飛んできたが、悪いがトウカの話を聞いてもその幼馴染みの話まで聞く気は無い今、スルーさせてもらった。
・・・・
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