73話 鬱憤
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を説明し、さっさとこの任務を終わらせるべく出発するしかなかった。
「王家の山まで、少々その馬車の中でお待ち下さい」
さぁて暴れるかと大剣を引き抜き、何故か顔の引き攣っているチャゴス王子に恭しく言っておく。ちゃんと、姫や陛下に負担のかからない全速力で向かうから安心しなってことだ。まぁそれでもサザンビーク兵に任せるより安全で速い保証はする。
「えっと、トウカ……?」
「ん?」
「単騎突撃ってことでいいのかな……」
「いやいや、しないさ。この馬車を守らなくちゃいけないだろう?」
わざわざ馬車から見えないところで戦うよりよく見てもらわないとね。目を塞ぐとか耳栓するとかも別に勝手にしたらいいとは思うけど……まぁ、慣れていらっしゃる陛下や姫には見せてもまぁ平気でしょう。ちょっとだけ怖がってもらいたくて。温室育ちなんだから社会経験を、ね。
お……丁度いいところに魔物が……一、二、三……いやいや、数え切れないねぇ、見渡す限りのこの広い広いフィールドに蔓延っているんだから。さぁさぁ、危険だけど楽しいショータイムの始まりじゃないか!私の本領発揮ができるんだ、張り切っていこうね!
好奇心半分か、少し馬車の幌の隙間からこちらを覗いていたチャゴス王子にとっておきのサービスとして、他のマージマタンゴより大きくて見栄えのいいやつを選んで一刀両断し、バイキルトのかかったダンビラムーチョの一撃を素早く躱しつつその首をすぱっと迅速に刈ってみせた。
……ううん、我ながら刺激が足りないね。でも必要ないのに切り刻むっていうのは……好きだけどさ、敵が多すぎるんだよね。
ゼシカから飛んできた味方のバイキルトに感謝しながら続けてその、ダンビラムーチョの腹の贅肉と見せかけた筋肉にしゅっしゅっしゅっと深々切り目をつけてみたり、飛んできたヘルコンドルの羽根をばっさりむしってみたりと踊ってるみたい、と自分でも思う。
そのうち、ざくりと一際しっかりとした手応えを感じて思わず口角が持ち上がった、とそこまでは自分の表情を把握していたのだけど……そこからは我慢の限界、というか。一応ライティアのしょぼいドルモーアを浴びていた日だというのに存分に暴れ回った私は、服にシミ一つ付けることなく随分遊んだみたいだった。みたい、なのは後半が無意識だったから。
・・・・
「あは!」
アルトの高さの声は変声器が低く歪めているだけだと、知った。
相変わらず焦げ茶色の髪が彼女の右半分の白い顔を覆っているが、浮かべているいっそ狂気的な笑みは遠目からでもしかと分かった。これはこれは……今日も、随分と楽しそうだ。勇ましいのはなりよりだと現実逃避じみた言葉が頭の中でちらつく。
既に鮮血に染まっている巨大な刃が日の光にぎらりと煌めき、次の瞬間に
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