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剣士さんとドラクエ[
70話 謁見
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はあるし、実のところ赤い絨毯の真ん中を堂々と踏んでいるだなんて考えたくもないのだけど……やらないといけない時、事ってあるからね……。諦めなきゃいけないのに、今でも心の底にひりひりと傷つく大昔の大昔、とか。ま、今日でそれはかなりましになったと思うけどな。

 分厚い絨毯の上を歩き、サザンビーク王の居られる玉座の間に向かいながら、悶々と一人考えこむ。緊張しているのは皆同じで、エルトから表情が消えてるし、ククールやゼシカの顔もどこか引きつってるぐらいだ。ヤンガスは恐る恐るといった様子で絨毯を踏んでいて、調度品に目が行ってしまうのを必死でこらえているのが分かる。彼はすごく頑張っているんだよなあ……ヤンガスの情にあつい性格は本当に尊敬する。残念なのは……堪えているのにもかかわらず、サザンビーク近衛兵に睨まれているということかな。分かってくれないんだよね……初対面じゃしょうがないけど、なんだか悔しくなってきたぞ……。

……さて。着いてしまった。深呼吸をひとつして、絢爛な広間に足を踏み入れる瞬間は何時だって緊張する、慣れているはずのトロデーンだって緊張するのだから、当たり前ではあるけれど……。

「……」
「……」

 すっと一礼して入れば、慌ててエルトが頭を下げたのを気配で感じる。他の皆も同様に。 

 さらに上質な絨毯に足首まで埋もれそうになりながら、胸を張って堂々と歩き、王の前でそっと止まる。頭を下げる気はあれど、膝を折って敬意を払う気はあれど、それを望まないなら私が頭を下げるのは本来は陛下と姫だけなのだからするつもりはない。見極め、というのが口悪く言った場合の本心だ。

 ……あれ?サザンビーク王……もといクラビウス王が何故かエルトの顔を凝視している……?目をこすったりして……。

「……?」
「……気のせいか」
「陛下、どうなされましたか。この旅の者が何か」
「なんでもない、よく見れば全然似ていないではないか……」

 何だったんだろう……懐かしい人にあったような、そんなまさかと言わんばかりな、物言いたげな反応。喜びと悲しみの入り混じったような……?エルトって、八歳の時からトロデーンにいるけど、トロデーンから出たことあったっけ?アスカンタも初めてとか言ってなかった?それより遠いサザンビークに行ったなんて聞いてないし……?やっぱり人違い、だよね。名君と謳われるクラビウス王が……珍しいな。

「……それで、何の用があって我が国に?」
「私はトウカ・モノトリアでございます」
「あぁ、ヴェーヴィット家から話があったな」

 私が当主を継ぐ前に親友のエルトと旅をしていること、ドルマゲスという凶悪な殺人犯を追っていること、仲間がドルマゲスを仇としていることを真実九割五分で話す。残りの五分はトロデーンが茨に包まれていると
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