69話 「彼女」
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「このッ!」
「甘い、遅い、弱いッ!」
ライティアから放たれる初級と中級の攻撃魔法の連打を危なげなくトウカは切り捨てていく。全く臆せずに要領よく切り裂いていく様子は余裕が漂っていて、ますます焦っていくライティアの狙いは次第にトウカから逸れ始めていく。うっかり巻き込まれかけたエルトが慌てて飛び退き、突っ立ったままのククールとヤンガスを引きずった。
その間も二人は互いを睨みつけ、少しも似ていない顔を歪ませる。バチバチと身に余るほど強大な、しかしコントロールすらできていない魔力をライティアは必死で集中させ、片手で普通ではありえないほどの重量の大剣を構えて油断なく目を光らせるトウカは少し口角すらあげていた。
「狙うのは私じゃないの?」
「くそぉッ!馬鹿にしないで!」
「淑女の台詞じゃないな?」
「あんたに言われたくないわッ!」
「……そりゃそうだ。悪かった……その件に関しては謝ることしかできないな。なにせ反論できない」
素直に女らしさの無さを認めたトウカは左手の手袋を翻して込められた魔法を開放し、「マホバリア」を張ってみせる。紫色の魔法の障壁は、トウカをすっぽり包み込んだがお世辞にも頼もしいとは言いがたいもの。しかしそれで満足した表情になったトウカは挑発するようにくいくいとライティアに手招きした。
「勝負をつけてやる。こいよ……私が耐え切ってやる」
「ちょっ……トウカッ?!君は……!」
「エルト、大丈夫だ。バリアを張ったから」
「でも……!」
「煩い煩い煩いッ!そんなに自信満々なあんたの鼻っ柱をへし折ってやるッとっておきを食らわせてあげるッ!」
さっと剣を構えるトウカは何を考えているのか。長年隣にいたエルトにも分からなかった。挑発にあっさり乗ったライティアは持てる力を全て注ぎ込んで、邪悪にしか見えない闇の魔法を唱え始め、不穏な空気が立ち込める。さっと青ざめたライティアの母親は必死で彼女を抑えこもうとするも、未だ娘に操られた夫に阻まれて何もできず。
しかし、不思議なことに魔法に弱いはずのトウカは不敵に笑うだけで。
「……白黒つけたいんだよね」
妙に感情のこもっていない冷たいトウカの声がエルトの耳に虚しく響き、炸裂する闇の魔法にトウカの姿はかき消され、狂ったように……実際狂っているのだろう……笑うライティアの醜い声が不意にぶつりと途切れた。
そして、ライティアの悲鳴めいた声と、困惑したようなトウカの聞き返す声だけが、荒れ狂う魔力の風に逆らって近づこうとするエルトの耳に虚しく聞こえた。
・・・・
幅広の剣を構え、あっさり挑発に乗ったライティアの魔法に備える。ぶっちゃけ剣に当てたらそこは消滅するし、魔法の残滓で死ぬほど流石に弱くないから死なないに決まっ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ