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剣士さんとドラクエ[
69話 「彼女」
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の。あんなに背が高いわけでもないし、あんなに体が逞しいわけでもない。あの人両目ばっちりあったし、誰もが見たらすぐ男だってわかるようなもんじゃないか。男……、……あ。

「ねぇ、トウカ」
「な、なんだい……」
「もうこの件は置いといていいよね?彼女、もう座り込んだまま動きそうにないし……。だからさ、いろいろ説明してもらおうか」

 そう言ってエルトが微笑んだ。少し、黒い。見慣れた微笑みの筈なのに怖かったし、罪悪感がぶわっとわき出てきて、ぶるりと私は身を震わせた。私が悪いのはわかってる。だけど……怖い。

「……『私に従え。勝手にしろ』……叔父上、部屋を借りますよ」

 さっさと叔父上の呪縛を外すと、傾いた屋敷の扉を押し開いてさっさと入っていく。慌てて叔父上が執事に案内させるように命令しているのが聞こえ、その案内で当主の部屋に通されたから遠慮なく使わせてもらおう。

 ……さて。私は、……、殺されてもいいかもしれないなぁ。裏切り者には死を、だろ?みんなはどう思ってるんだろうか……すごく、怖いね。

 いつの間にか視界にちらちらとしている髪の毛が茶色に戻っていた。

「何も知らない愚か者に光あれ」

・・・・

 部屋に入ったトウカは、何故だか真っ先に剣を下ろすと絨毯の上に並べ始めた。大剣、双剣だけじゃなくてあまり使ってるのは見たことがないけど太ももにぐるりと挟んでいるナイフを引き抜いては並べ、懐から大量に短剣を出し、篭手の隙間から針まで出した。その時にはみんなして遠い目になったていて、こんなに刃物を持っていたのかといっそ感動した。ヤンガス、目を輝かせて尊敬しなくても……いや、ここまできたら尊敬ものだよね、なら仕方ない……。

 髪を結っていた紐に組み込まれていた針金、ブーツに仕込まれた刃、腕を覆う防具を外せば、内側に仕込まれた仕掛けの刃がバラバラと落ちたり鎖帷子を脱いで普通の服だけになったと思えばその服のボタンに小さい仕込みナイフが……とか、もうふざけてるんじゃないか?なんでそこまで武器を持とうとしたんだよ、君は肉体が凶器じゃないか……物理的に……。

「これで全部……かな?さぁ、煮るなり焼くなり好きにして。質問には基本的に全部答える」
「……なんで武器外したの?」
「誠意を見せるためと、あそこまで体の線隠してたらいまいち分からないから。流石にこれ以上脱ぐのは女としての矜持が許さない……ゼシカならいいけど」

 ……、うん。トウカの思考回路はこの中では一番分かっているつもり。言いたいことは分かったし、確かにトウカならそう考えるのも予測できたはずだ。でもさ、いつも思うけど考えが突飛過ぎて頭がなかなかついていかないんだけど……。武器を外して……トウカは剣士なのに。親友の性別も分からずに十年も付き合いがあって……
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