68話 因縁
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
周りの人はみんなルゼル様のことを知らないって……死んだ『妹の』トウカの話ばっかりして……あんなやつ、捨て子の養子の癖に!本当に血の繋がりがあって、本当にルゼル様の姫になるのはこのライティアだというのに……うふふふふ、これからはライティアだけを守ってくださいませ!」
ライティアは見せびらかすように、チェーンで留めた何かを服の下から出して弄ぶ。鞘から抜いたり、戻したりしているそれは血で錆び付いた古いナイフで……あぁ、頭が痛い。幼き日の私のトラウマじゃないか。フラッシュバックする、赤い記憶。胸の痛みを鮮明に思い出す。嫌味な少女の笑み、吹き出す血。声が思わず、震えた。
「…………、その、ナイフは……」
「これですか?ライティアの宝物ですの!モノトリアの異端児トウカを殺した時の私の得物ですわ!ルゼル様もあんな女、妹にしたくはないでしょう?ライティアは未来を見て知っていますの。トウカは剣士として大成するのですが、ルゼル様のご心労の元となり、婿も取らずに生きるのですわ!」
「……」
「ルゼル様のお気持ちも分からず、ずっと男よりも戦い続けたトウカは結局、そのまま独り身で死ぬのですわ!貴きモノトリアの血も残さないのに生きる価値なんてありません!だからライティアが、予知能力を持つライティアが赤ん坊のうちにその芽を摘み取っておいたのですわ!ルゼル様のため……」
「……五月蝿い!」
その言葉に私は耐えきれなかった。「トウカ」を否定する言葉にとうとう耐えきれなかった。私はライティアの胸倉を掴んで、怒鳴りつけることを止めることができなかった。
分かっていたんだから。私が「モノトリア」として、役に立たない存在だってことは。兄上の代わりにならない、女としても最早使えないような……中途半端な存在なんだから。誰が私なんかを欲しいっていうの?可愛らしい顔も、柔らかい体も、女性らしさも欠片もなくて。男よりも力がある馬鹿力で、魔物をぶった斬ることしか能がなくて。ああ!分かってたさ。でもすべてを、すべてを否定されて……それに耐えれるほど、私は……強くなかったらしい。強くなりたかったのに。
それでも。ライティアだけには言われたくなかったんだ。ライティアは魔法が使えるのに、ライティアは胸を張って言える正統な血筋なのに、私よりも努力をしなかった。私より強くなろうとしなかった。私よりモノトリアの為になろうとしなかった。自分の欲望ばかり優先して、逆恨みして私を刺したライティア。絶対に、お前にだけは言われたくなかったんだ!
ヴェーヴィットに落とされてからも、ずっとずっと、真実を知ろうともせず!自分は不幸だと悲観に暮れてばかりで!叔父上も叔母上もそれを止めるのに、聞こうとせずに!魔法をいとも簡単に破ったかと思えば市民の血税で贅を尽くして……!許されて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ