67話 血脈
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ビーク王に修行の旅をしているモノトリア長子トウカが謁見をしたがっていると取り次いでください。それから……叔母上、叔母上はトロデーンの出来事をご存知ですか」
「いいえ?」
義母上によく似ている叔母上を直視するのは、少し辛い。体の弱い義母上と違って、極端に両眼の視力が悪い叔母上は私を目を細めて見つめるのだ。本心から分家として、次期当主を守り、叔母として慈しんでいるのだ。私が養子であると知りながら。その、義母上に良く似た優しい眼差しは……黒色の宝石のような輝きを……え、黒?
叔母上の目は、いつでも優しい灰色だった。視力が悪いゆえにとても色素の薄い色だった。瞳の色が変わるのは、たまに変わる私が言えたものでもないけれど……なんらかの魔法や薬によるものとしか考えられない。で、だよ。例の「強制力」をかけられるとそのかけた相手の目の色になるんだよね……。嫌な予感がするなぁ、「あいつ」、黒だし……。
「申し訳ございません……『私に従え』」
「……『はい』」
取り敢えず、誰にかけられているのか分からないけれど「強制力」の上書きをしてその効力を打ち消す。やるとしたら「あいつ」だけど……「あいつ」って血の強さでは養子の私を下回る最底辺なんだけどな……魔力でゴリ押せるなら話は違うけれど。出来たっけ?
にしても魔力を使わないのに漆黒の鎖が相手を締め付ける、みたいなことになるんだね、「強制力」って。上書きしているせいか、私に比べれば弱々しい灰色っぽいくすんだ鎖が朽ち果てて消えていく。やっぱりかかってたんだね……本当に、この血は厄介なこと。
あぁ、エルト。そんなにびっくりしないでよ。びっくりなら私もしてるから。小さく、安心させるようにエルトに向かって目配せした。……口が半開きになってるよ?じゃらりと鎖を巻き取るように持ち上げてっと。
「『勝手にしろ』」
で、煽ってるとしか思えない台詞を吐いて「強制力」を解除する。私の黒い鎖は見る間に溶けるように消えていった。どうでもいいけどこう言えって教わったから仕方ないよね……でも、思わず最初に作った先祖のセンスを疑ってしまうね?
「……今の、何?トウカって魔法使えたの?」
「魔力はなかったわよ……」
考察は勝手にしてて欲しい。悪いけどちょっとそれどころじゃない。叔母上が心配なんだから……。
「…………」
「……、あら?」
経過を知るために無言で叔母上を見ていれば、不意に目をパチクリして彼女はこっちを見て首をかしげた。繰り返すけど、彼女は酷く目が悪い。眼鏡をかけてもあまり意味が無いらしいほどに。……それなら、目を細めても対して意味はないんだろうな……。
「私はなぜここにいるのかしら……。貴方は……どちら様かしら?ごめんなさいね、私、よく目が
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