第一章:大地を見渡すこと 終
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とし、三振り目の武器を持った詩花の姿を見つけて自分の行為を中断した。
彼女が持っているのは典型的な戟であるが、刃の裏側から生える二つ目の刃である戈|《か》を見ると、戟というよりも鎌の印象を受けてしまう。使いこなすまでに時間がかかる武器であることがすぐに分かった。槍のように敵の体を刺して、それが外れた場合には戈でもって引手で掻き切ることを理想としている。詩花が持つそれは長さ七尺|《≒210センチメートル》ほどの長戟とされるものに分類し、金毘を駆って戦場を掛けるにはうってつけの武器であった。
ただ彼には一つの懸念がある。後に諸葛亮孔明によって実戦投入される槍にうってかわられ、その活躍の場を縮小していくことだ。活躍の場が少なければ武器に対する需要が減少して、当然必要性も減るからこれを扱う職人が居なくなる。これはあくまでも今の彼女には必要であっても、未来の彼女には必ずしも必要なものではないだろう。そんな思いを彼はいつかこれを想起する時のために心に残す。
彼女もまた武器を扱いたそうにしていたが、武器屋の中はそれを振り回すには若干狭すぎていた。詩花は残念そうな表情をして刃をみつめている。
「遊びの、実はまだ他にもおもしろいもんがあるんだが」
そう呼びかけられた仁ノ助は、クレイモアを壁に立てかけて親父の方を見る。親父が手に抱えていたのは一つの木製の箱である。こちらを見たのを認識すると親父は箱の中身をみせるように蓋を開ける。
中にあったのは数本の短い刀であった。柄を含めて長さはわずか八寸|《≒24センチメートル》も無い事から、専ら投擲用のナイフと解したほうがよさそうだ。これもまたクレイモアと同様に特徴がない外観である。だが暗器として扱うならば武器に特徴など関係はない、むしろ無いほうがいざ暗殺に使ったときに面倒にならずに済みそうだ。
思った以上の成果を得られて顔がにやける。そんな彼を見て親父は自分の仕事が役立ったことを誇るように笑みを浮かべた。
刻は夜明けの一つ手前というべきか、朝早くに出立して足を稼いでおく事を決めた二人は町で購入した馬と金毘に乗って、町の外へと繋がる門に向かっていた。両者の鞍には必需品を入れた大きさ二尺ほどの袋が乗せられている。
仁ノ助は昨日の買い物で購入した藍色の外套|《がいとう》を青の上着の上に着けている。服の前面を閉じるような結び目が見当たらないことから、外見を意識して作られたものらしい。しかし外套の中にはいくつもの手製の結び目があり、この中に投げ刀が鞘に入った状態で手に届く位置に収められている。左の腰には新しく手に入れた双手剣を差し、呉鉤は馬に乗せた鞍につけられて馬が動くたびに震えている。詩花は自らの戟を左手で後ろに流すように持ち、右手で器用に手綱を操る。
やがて門前に差し掛かって衛兵に
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