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剣士さんとドラクエ[
54話 困憊
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々と溜息をついただけだった。

・・・・

 アスカンタに戻ってみれば、まだ話し合いをしていたみたいだ。何のって、誰が、どうやって国宝を取り戻すかをね。まあ、国王交えての場に乗り込んだら水を打ったように静まり返っちゃったんだけど。……なにかおかしなことしたっけ?

「トウカ、顔に血が付いてる」
「……お目汚し失礼しました」
「あと、服が破れてて鎖帷子が……」
「どうしようもないこと言うなよ」

 ハンカチで顔を拭ってみれば、なるほど。べったり赤い血が拭えた。そりゃあ静かにもなるよ。しかも、この血返り血もあるけど、殆ど自分のだし。傷の方はアモールの水で完全に治ってるからないんだけど。

「月影のハープは奪還いたしました」
「おお!さすがはトウカさんです!」
「しかし、他の財宝については……『少々』手荒な事態でしたが、月影のハープ以外は見当たりませんでした。宝物庫の奥にある、もぐら型モンスターの住処へ行けばあるはずです。我々はそれに関与は出来ませんし……」
「情報有り難うございます」
「いえ」

 失礼します、という意味で優雅に一礼する。思い描くは、贔屓目に見なくても格好いい義父上。束ねた長い茶色の髪を揺らして、気品の漂うような綺麗な所作で、そして顔は引き締めながらもどこか優しいような、それでいてクールな……真似できないね。なんで、本家モノトリアの人たちはあんなにハイスペックなんだろう?分家になった瞬間にグレードが落ちるんだけどね。ほら、血を引いてるだけじゃこの通り出来損ないだし。

 くるりと振り返ってエルトたちを見てみれば、なんか……ポカーーンって感じって言えばいいの?エルトとヤンガス、口半開きなんだけど。ゼシカはぽーーとしてるし。ククールは……腐った魚より目が死んでる。この短期間に一体全体何があったっていうんだ?

「あらやだ、兄さんみたい」
「それは、ありがとう」

 ゼシカの言葉に返事して、動きの鈍い皆をさっさと玉座の間から押し出して下の階に降りた。しておいてなんだけど、私語は駄目な空間でしょ、あそこ。

「……たまに雲の上に行っちゃうね」
「この素朴系イケメンが!ボクには到底出来ない本物のイケメンがっ!知ってるか?エルトはモテモテなんだぞ!ファンまで居るエルトの方が遠い人だろ!」
「……ねぇ、初耳なんだけど」
「ボクは小さなうわさ話すら網羅していただけさ、何も聞くな」

 エルトと茶化しながら、さっさと城から出る。ククールがブツブツ独り言を言っているのは聞かないようにして。君、そんな癖あったんだね。……ちょっと怖いんだけど。言っておくけど、さっきのは絶対ククールがやったほうが絵になったし、黄色い悲鳴が聞こえるからね?

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