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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第228話 結城家の食卓
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途端、静かだが、びんと張った声が明日奈と玲奈の耳を叩いた。
「遅いわよ。……5分前にはテーブルにつくようにしなさい」
時計を見てみると、6時半丁度。遅れてはない、と言う事を考えるよりも遥かに早くに言われ、何も返す事が出来ずに、2人とも。
「……ごめんなさい」
「ごめんなさい……」
低い声で呟きながら、テーブルへと歩み寄った。
20畳はあろうかというダイニングルームの中央に八脚の椅子を備えた長いテーブルが設えてある。その北東の角から二番目と三番目が明日奈、玲奈の席だと決まっている。その玲奈の左隣が兄、浩一郎。東端が父、彰三だが今は両方とも空いていた。
食卓とは、家族団欒の場。和やかな一時。一日の終わりと面白く、時には真剣に、話をして、訊いて、……そんな場。
だけど、そんな当たり前な事も、2人は知らずに。……いや、厳密には知っていたが、我が家では程遠い事だと認識してきた。 明るく笑顔な玲奈でも、この刺す様な空気の中で 振るう事など出来る事もなく、母親、京子が 不快にならない程度に視線を落としているのだ。
そして、2人が、其々の席に座ったのを確認すると、先程からお気に入りであるシェリー酒のグラスをテーブルに置き、読んでいた経済学の原書を閉じて、ナプキンを膝に起き、ナイフとフォークを取り上げた所で、2人の顔を観る。
これが合図、なのだ。
次に2人が同じ様に準備をして、小さく『いただきます』と会釈をし、スプーンを手にとった。
それは、向こうの世界では考えられない程の静寂な空間。
ただ、響くのは銀器が立てるかすかな音、そして 蝋燭に火が揺らぐ、そんな微かな 普段では聞こえる筈がないであろう程の音をも拾う。それだけ、だった。無音の世界、と言っても大袈裟ではないだろう。
――いったい、いつ頃から母親との食卓が、こんなにも緊張感に満ちたものになってしまったんだろう……?
それは、明日奈の気持ちである。
いや、或いは玲奈自身もずっと考え続けてきたのかもしれない。
『誰かを想って作る料理は素敵で、そして美味しかったら、美味しくなったら、尚嬉しい』
『料理は、食事は元気の源』
あの世界で、玲奈がしきりに彼に。……隼人に説いた言葉だった。
――……だけど、自分はどこでそれを習った? どこで、そのことを教わった?
玲奈はそれを考えていたのだ。間違いなく、この緊張感にあふれた食卓。佐田には感謝を深くしているが、それでも自分たちで作った物ではない食事を口にしている場では 培う事など出来ないと思えるから。
だから、必然的に2人は機械的に食事を続けながら、記憶のかなた、異世界の我が家へと意識が彷徨いそうになっていた。温かい其々の|
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