暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第228話 結城家の食卓
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『……ありがたく頂きます。本当にありがとうございます』
『い、いえいえ。あ、もし良かったら、佐田さんのアドバイスもくれたら嬉しいです』
『はい。判りました。喜んで』

 場が和やかになった所で、階段の上にいる明日奈の気の持ちも代わり、先程まで重かった、引きずっていたのではないか? とも思える程の足取りも消え、歩を進めた。

「お疲れ様です。佐田さん」

 妹の玲奈も、最初に下に降りて、佐田と顔を合わせて、感謝の言葉を伝えた筈。と明日奈は想い、直ぐに言葉に出した。

「本当に、毎日ありがとう。遅くまで御免なさいね」

 明日奈が降りてきた事に気づいた佐田は、視線を玲奈から外し、滅相もない、というふうに目を丸くして首を振って、深々と一礼をした。

「と、とんでもないです、明日奈お嬢様。これが仕事ですので。……それに、とても心温まるプレゼントも頂けたので、これ以上、本当に無い事です」

 両手に持った箱。両手にすっぽりと収まる程の大きさのリボンで綺麗に、可愛らしく装飾されている箱を明日奈の方に向けて、佐田は再び深く一礼をした。

「あはは。今度は 私もお願いします。妹に負けない様にしないといけないので」
「うんっ」

 2人の笑顔を向けられ、佐田は また 穏やかな表情へと変わっていたのだった。

 明日奈は一頻り小さく笑うと、ゆっくりと歩み寄って、小声で訪ねた。

「母さんと兄さんはもう帰ってます?」
「浩一郎様は、お帰りが遅くなるそうです。奥様は、もうダイニングにいらっしゃいます」
「……そう。ありがとう」

 明日奈は礼を言いつつ、玲奈に視線を向けた。
 それだけで伝わった玲奈は、一歩 佐田から離れると、同じ様に礼をいい。

「引き止めて御免なさい、佐田さん。また、よろしくお願いします」

 そう言うと、佐田は再び深く腰を折り、重いドアを開けて、帰っていった。

 先程の玲奈の言葉の中にあるとおり、佐田には子供。中学生と小学生の子供がいる。
 彼女の家は、同じ世田谷区内ではあるが、今から買い物を済ませて、帰宅するとなると、7時半は回ってしまうだろう。
 食べ盛りの子供には辛い時間帯だ。玲奈自身も何処かで想っていたことなのだろう。だから、彼女も行動に移したんだと思える。笑顔で受け取ってもらえる様に、必死に考えて。

 明日奈は、それとなく母親に夕食は作りおきに……、と言ってみたことがあるのだが一顧だにされなかった。

「レイ、行こ」
「………うん」

 和やかになった空間は、静かに、今の冷たい空気で冷めていく様に、徐々に消え失せ、少なからず再び重くなった足を、ダイニングルームへと向けて歩き出していった。

 2人が、同時に重厚なオーク材のドアを左右に開け、中へと入った
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