34話 待機
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六時中堅苦しく型通りに接する必要は無いからの」
「しかし、陛下」
「わしが許可し、命令とするのじゃ」
「はっ」
トウカ・モノトリアという人間は、歴代の誰よりもモノトリアの鏡であり続ける。旅を始めて少し経つが、わしやミーティアの前で辺りへの警戒を怠ったことはない。しかし、そのままであればいつか壊れるじゃろう、人間である限りの。こやつは二晩徹夜するつもりなのか。
モノトリア家が何の因果かは記録に残ってはおらぬが、トロデーン王家に仕え、裏切りを最大の罪とし、血を重んじ続け、「色持ち」を認めないのかは分からぬ。分かっているのはあの一族が自らよりも王家を優先し続けたということだけじゃ。
しかし、この場にいる忠実極まりないモノトリアはミーティアと同い年の若き青年。慣習によって雁字搦めになる必要はないのじゃ。当主ですらない。
それでも彼はよく言うておる。自分は出来損ないだと。しかし勿論わしはそうは思わん。他の誰もが考え付きもしないじゃろう。
なにしろ、彼は剣の天才であり、槍の名手であり、武道の達人であり、数学者であり、優秀な頭脳を持つとてつもない努力家であり、トロデーンが誇る屈指の忠臣じゃ。本人曰くの「出来損ない」である片目が見えない事は彼の過失ではないしの。
……まぁ、そんな彼と同じ血を引く「彼女」と比べれば誰でも優秀じゃろうから、それもあるかも知れぬ。……裏切り者のモノトリア、ライティア。もといライティア・ヴェーヴィットの存在がちらつくの。あの、幼き日のトウカを殺そうとした悪女。
何もなく時が過ぎていればトウカの妻となったかも知れぬのにの。ルゼル・モノトリアという死産であったトウカの兄を、名前だけで執着し、遂には狂ったあの女。
一族から追い出され、追いやられたサザンビークの地でもあやつの評判は良くないの……。
トウカは明るい人間じゃが、それはライティアを忘れ、死して産まれぬ兄を演じているだけに過ぎないのじゃ。ルゼル・モノトリアが生きて育っていれば、彼はどのような人間になっていたことじゃろうか。今のトウカを止めたじゃろうか。
わしは知っておる。トウカは産まれてから一度も会ったこともない兄に未だ謝り続ける悪夢を見るのを。朝目覚めるころにはすっかり忘れてしまっていることを。あの当主が不安げに報告してきたことじゃ。
しかし。誰があやつに魔物を片っ端から細切れにせいと言ったのじゃ……。誰があそこまで潰せと言うたのじゃ……。物事には限度があるじゃろ……。
・・・・
「神聖な魔力がだんだんと満ちてくるわね」
「そうだな」
「……何となく分かる気がするなぁ」
魔法に長けたゼシカとククールにははっきり分かって、あんまり得意でもない僕やヤンガスは何となく感じ取り、魔力の
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