34話 待機
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見えなかった。隠されていた右目の漆黒は、焦点が合わずぼんやりと虚ろだったが、それを感じさせないほど生き生きと顔全体で微笑んでいた。
「……何?」
「お前、そんな顔してたんだな」
「それはボクが童顔だっていいたいの?」
「そうじゃない」
こっちの会話に気付いたゼシカが少し以外そうな表情でトウカの顔を見、ヤンガスが少し目を見開いているのを視界の端でとらえる。
エルトだけはトウカの顔を見慣れているのか知っていたのか無反応だったが、童顔、のくだりで少し反応した。個人的にはエルトがそういうことを気にする奴である、ということに驚きなんだがな。
「……えらく」
「ん?」
「可愛らしい顔だな」
「……そうか」
少し意外そうな声色で言い返してきたトウカは何故か怒らず、そのまま会話を終了させる。可愛らしい、と言われても文句を言わないほど言われ慣れて来たのか、はたまた彼は評価を単に気にしないだけなのか。
彼を特に短気な人間だとは思わないが、怒らないことは実に意外だ。俺に可愛らしいと言われて烈火の如く怒ることも想定済みだったのだから。
「トウカ、一応、貶されてるよ?」
「ボクの辞書の『可愛らしい』はほめ言葉だからいいんだよ。『可愛らしい』は別にブサイクだなんて言ってないだろ?」
「……いいのか」
「可愛らしい、はどう考えても罵倒だとは思わないからね」
男が男に「可愛らしい」というのは充分に罵倒に値すると俺は思うのだが……。少なくても俺が今エルトあたりに「可愛らしい」と言われれば間違いなく不信感を抱くだろうし、好印象ではないだろう。考えたくもない。
そんな事を考えているとトウカが欠伸をして目をこすった。そういえば俺たちは徹夜でここを登っていた。
「……眠い?」
「そりゃあね。まぁ寝るほどじゃないけど」
寝そべったまま、また一つ欠伸をするトウカだったが、確かに言葉通り、一見眠そうな目は良く見ればしっかりとした光を宿していて眠りそうな気配はなかった。
「あぁ風が気持ちいい」
「爽やかだね」
「なかなかここまでの景色を味わえる場所も無いだろうしね」
確かにこの「願いの丘」は見晴らしが素晴らしく、晴れ渡る青空が、真っ白な雲が印象的だった。
・・・・
ようやく昼下がりになった。特に何もせず、景色を眺め、のんびりしていただけじゃが。
相も変わらず眠たげだが意識はしゃんとしているトウカを呼びつけてみれば、さっきまで伸びていたのが嘘のように飛び起きた彼はすぐに頭を下げて臣下の礼をとった。
「どうやらここに魔物は近づけないようじゃからの、存分に休むがよいぞ」
「ありがたきお言葉でございます」
「……それからお主はもう少し肩の力を抜くのじゃ。父のように四
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